上海アニメイベントに40万人 日中アーティストコラボなど激アツのBML2025に潜入

中国で行われた「BML2025」をレポート

第3部:オーイシマサヨシ&宮野真守の貫禄

オーイシマサヨシ

 第3部の序盤には『SSSS.GRIDMAN』シリーズの内田真礼楽曲(「ストロボメモリー」と「youthful beautiful」)のカバーメドレー。同シリーズへの期待が最高潮に高まったところに、オーイシマサヨシが『電光超人グリッドマン』主題歌「夢のヒーロー」のSEとともに入場、「インパーフェクト」を歌い上げた。

大石昌良【オーイシマサヨシ】公式X(旧Twitter)より

 オーイシ本人も「中国でもグリッドマンは大人気です」と投稿していたように、「uni-verse」でのシンガロングの熱狂は世界、いや宇宙共通だ。「アクセス・フラッシュ」のポーズを随所で披露するパフォーマンスも交えながら、まさにアニソン歌手として理想的な振る舞いで上海のオーディエンスを大いに沸かせた。

 手の甲に書かれた中国語のカンペMCを読み上げるという小ボケを挟んだ後は、「B小町」ならぬ「Bilibili小町」とのコラボレーションとして「サインはB」を歌唱。怒涛の合いの手で歓声を誘いながら、当たり前のように原曲キーでダンスとともに歌い上げる圧倒的スキルをさりげなく見せつけるスタンスがうまい。ラストに演奏された「君じゃなきゃダメみたい」のギターフレーズも同様で、相当に技巧的なことをやっているはずなのにそれを感じさせないコミカルなキャラクターは海を超えても愛されていたようだ。〈君、じゃな、きゃダ、メみたい〉のキャッチーなフレーズが日本語で歌われているのを目の当たりにして、改めてこの曲のポテンシャルを感じさせるステージだった。

オーイシマサヨシと赖美云による「君じゃなきゃダメみたい」コラボパフォーマンス

 そして大トリを務めたのは宮野真守。宮野もまたオーイシと同様にバラエティ的なトークスキルが持ち味だが、彼の魅力はパフォーマンスとのギャップにあるだろう。「カノン」から始まった宮野のダンスパフォーマンスは、ワールドツアー中のトップアイドルのステージか何かだと思われるほどだ。

宮野真守

 「SHOUT!」のシンガロングパートでは、エンターテイナーとしての貫禄を見せつける。客席を左右に二分しそれぞれを煽るのはライブでは定番のパフォーマンスだが、異国の地であることを忘れさせるほどのステージングには圧倒された。声や表情、しぐさでオーディエンスと対話するというのは月並みな表現だが、具体的にはこういうことなのかと、宮野のパフォーマンスを観て改めて思い知らされるだろう。

 ラストは宮野がキャラクターボイスを務める『ウルトラマンゼロ』の主題歌「ULTRA FLY」。中国での『ウルトラマンゼロ』の人気は凄まじく、4月に開催された同作の15周年記念コンサートでは、オンライン視聴者だけで8,000万人を超えていたという(※)。日本で言うとほぼ2人に1人が観ていたことになる。

 そんな「国民的」IPのクライマックスには、ウルトラマンゼロ「本人」もステージに登場。宮野との夢のコラボを果たしてステージを締め括った。もちろんウルトラマンゼロ役としての宮野の「生声」も披露。2.5次元的パフォーマンスとして最高のステージが誕生し、第3部も終了した。

宮野真守&ウルトラマンゼロのコラボパフォーマンス
上海新世界にて(筆者撮影)

タイムカプセル

 イベントのラストにはBML定番だという「タイムカプセル(时间胶囊)」パートが開始。二次元コンテンツ系の楽曲を数十曲、怒涛の勢いでカバーし続けるメドレーパートだ。私はこれが実際に始まるまで存在を知らなかったのだが、上海の友人曰くユーザーが思い出に浸るためのかなり重要な、というかメインイベントに近い時間なのだという。

 ここ数十年の名曲が立て続けに演奏される、まさに「タイムカプセル」と呼ぶにふさわしい時間で、個人的には「熱き決闘者たち」を思わぬかたちで生で聴けたことに感動した。

 こうしてBMLすべてのステージが終了。たしかに話に聞いていたように、いわゆる日本国内でイメージされるような大型アニソンフェスとは違った雰囲気を楽しめた。ロックフェスとDJイベントを足して2で割ったうえにニコニコ成分でフィルターをかけた結果よくわからない魅力の空間が出来上がった……とでも言うべきか。

「再来一杯」のキーと度数らしきものが記されている(筆者撮影)

 会場で配布された、イベントのテーマ曲「再来一杯」の楽譜(?)も興味深い。厳密には「楽譜」ではないが同曲のキーと度数(と思われる)が記されており、コピーの助けになってくれる。要するにbilibiliユーザーの「歌ってみた」なり「演奏してみた」なりを奨励するものだろうか。ユーザーの二次創作性が醸成されているところに、アニメ的ネットカルチャーの継承を感じる。個々の日本IPがグローバルに広がっているというだけでなく、二次創作的態度を前提とした作品との関わり方=「anime」的アティチュードのさらなる発展を予感させる、そんなライブイベントだった。

参考
※https://www.jiji.com/jc/article?k=3575339&g=cgtn

■イベント情報
BILIBILI MACRO LINK 2025
7月11日(金)〜7月13日(日)、上海国家会展中心にて開催
公式サイト:https://bml.bilibili.com/#/bml
公式X(旧Twitter):https://x.com/bilimacrolink

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「レポート」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる