『アプレンティス』『帰ってきたヒトラー』など 選挙に合わせて観たい政治を描いた映画3選

7月20日、参議院選挙の投票日を迎え、政治や社会について改めて考えたくなる人は少なくないだろう。そんな時にオススメしたいのが、政治や選挙をテーマにした映画だ。今回は、ドナルド・トランプの若き日に焦点を当てた『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』、「現代にヒトラーが現れたら?」という設定で描く風刺映画『帰ってきたヒトラー』、そして100年前のイギリスで女性たちが参政権を勝ち取るために闘った姿を綴った『未来を花束にして』を取り上げてみたい。
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』

『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は、実業家から米国大統領へと上り詰めたトランプの若き日に焦点を当てた伝記映画。気弱で繊細だった青年トランプが、マッカーシズム時代の冷徹な弁護士として知られる悪名高きロイ・コーンとの出会いをきっかけに、「勝者になるための哲学」を徹底的に叩き込まれていく過程が赤裸々に描かれる。
コーンは、「誠実さや共感よりも、支配力や強さにこそ価値がある」という思想を、若きトランプに容赦なく植え付けていく。映画はそのプロセスを通じて、トランプの人格が形成されていく影の部分を詳細に映し出している。

現代の視点で見ると、この作品は単なる成功物語ではない。トランプが築いた“作られたカリスマ性”は、まさにネットやSNSが支配する現代社会の象徴と言えるのではないだろうか。彼のリーダー像は、真実や信頼ではなく“演出”がベースになっていて、そういった部分が人々を惹きつけている。ポピュリズムや分断が深刻化する現代のアメリカ社会において、この現象は決して他人事ではない。
観客はこの映画を通じて、「成功」とは何か、どういう人物を「勝者」と呼ぶべきなのかを改めて問い直すことになるだろう。トランプの栄光の裏には、倫理観の喪失が隠れている。メディアに操られたリーダー像の危うさを見抜き、情報に振り回されない目を持つことの重要性を痛感させられる1作だ。
『帰ってきたヒトラー』

次に紹介するのは、2015年に公開された『帰ってきたヒトラー』。この風刺映画はナチス・ドイツの独裁者、アドルフ・ヒトラーがタイムスリップして現代に現れるという斬新な設定を通じて、現代社会の闇を鋭く映し出す。
本作は、独裁者としての権力や威厳こそ失われたものの、ヒトラーのカリスマ性や影響力は健在であることを描いている。SNSやネットが発達した現代は第二次大戦中とはまったく異なる時代だが、それでも彼の過激で挑発的な発言は、経済不安や社会の分断に悩む人々の心に刺さり、支持者を増やしていく。メディアが過激なヒトラーの存在を利用して視聴率を稼ぐ様子も、現代の情報社会を揶揄していて強烈な風刺が効いている。

この作品は、情報操作やフェイクニュースの蔓延、移民排斥など、現代社会における問題と強く結びついていると言えるだろう。極端なキャラクターであるヒトラーを通して、危険な思想が時代を越えて再生産されうること、そしてメディアや社会の脆弱さを鋭く批判しているのだ。人々が特に恐怖や不安を抱えるときに、過激な言動に操られやすい心理もしっかりと映し出している。
観客が受け取るべき最も大切なメッセージは、「歴史の教訓を忘れてはならない」ということだろう。ヒトラーの復活はフィクションだが、そこに込められた警告は現実的だ。情報の真偽を見極め、感情的な扇動に流されないメディアリテラシーこそ、社会と平和を守るために不可欠だと訴えている。




















