高橋留美子作品が令和でも色褪せない理由 『MAO』が導く“新るーみっくわーるど”に期待

高橋留美子作品が令和でも色褪せない理由

 高橋留美子が2019年から『週刊少年サンデー』に連載している漫画『MAO』がTVアニメとなって2026年春にNHK総合で放送されることが発表された。主人公で陰陽師の摩緒を梶裕貴、ヒロインの黄葉菜花を川井田夏美が演じるキャスト陣と、『犬夜叉』や『半妖の夜叉姫』に携わったスタッフ陣が発表となり、制作も『犬夜叉』のサンライズと高橋留美子作品に縁がある名前が並んで、令和の時代に生まれた新しい「るーみっくわーるど」を見せてくれるのではと期待も膨らむ。

TVアニメ『MAO』ティザーPV|高橋留美子 最新作|2026年春放送決定

 年号が昭和だった1981年に『うる星やつら』のTVアニメが放送されて以来、高橋留美子の漫画を原作にしたアニメは常にテレビやスクリーンを通してファンを楽しませてきた。『うる星やつら』に続いて『週刊少年サンデー』で連載した『らんま1/2』も平成に入ってTVアニメ化されて大ヒット。以後も『犬夜叉』と『境界のRINNE』をメインに『1ポンドの福音』や『高橋留美子劇場』がOVAやTVアニメとなって、凜々しかったりかわいらしかったりするキャラクターたちが織りなす笑いと人情に溢れたストーリーを、映像として魅せ続けて来た。

 青年向けの『ビッグコミックスピリッツ』に掲載された『めぞん一刻』や、『週刊少年サンデー増刊号』に主に掲載された『人魚シリーズ』も含めると、手がけた作品のほとんどがアニメ化されている高橋留美子。1978年のデビューから漫画誌での連載を絶やすことなく続け、常に最前線を走り続けて存在を広く知られていることが、漫画自体の衰えない面白さとも相俟って、耐えないアニメ化につながっているのだろう。

ダークな世界観で挑む『MAO』の特異性

【梶裕貴・下野紘・豊永利行出演!】『MAO』ダイジェストムービー

 『MAO』もそうした、最新の高橋留美子作品をアニメ化する流れに連なるものだ。『週刊少年サンデー』での連載開始は2019年5月8日発売の号からで、年号が令和に変わったのとほとんど同時。少女が異界のような場所に紛れ込んで、不思議な術を使う摩緒という少年と出会うあたりは、前作『境界のRINNE』と重なるところがあったが、どことなくコミカルなテイストが漂って『らんま1/2』や『うる星やつら』からのファンも楽しませてくれた『RINNE』と比べると、『MAO』は少し違っていた。

 冒頭からシリアスなダークファンタジーといったテイストで、進んでいくうちに血なまぐさい戦いが繰り広げられるという、過去の『週刊少年サンデー』連載作品とは違うところがあった。絵柄もシュールだったり『人魚シリーズ』のようにハードだったりするところがあって、過去の作品と同じような支持を集めるのか興味を持たれたが、結果として2025年現在も連載は続き、TVアニメ化という大きな結果もついてくる人気作品となっている。

『鬼滅』以降の時代にも高橋留美子の挑戦は続く

 ラブコメディやスポーツものやギャグものが主流だった少年漫画誌の連載作品が、『鬼滅の刃』であったり『呪術廻戦』であったりといったハードなバトルも受け入れられるようになったことも、『MAO』が受け入れられた背景にあるのかもしれないが、なによりも高橋留美子が、令和の時代に新しいオリジナル作品を世に問う気概を失っていないことが大きいだろう。

 TVアニメの方も、そうした高橋留美子の令和オリジナルへの挑戦を、真正面から受け止めたような作品になりそうだ。公開されたMVには、摩緒であり菜花といったキャラクターが登場し、妖怪を相手にして戦う姿などを見せてあの漫画が本当にアニメになって動き出すのだといった期待を誘う。絵柄が高橋留美子の漫画から少し変えているような印象があるが、いつになくリアルに寄せたところがある漫画の絵柄をそのままアニメにしてしまうと、怖い話なのかと受けとってしまう人が出ることを心配したのかもしれない。

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