米アニメ界に思わぬ伏兵 『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』が絶大な人気を得た理由

アメリカのアニメーション界に、思わぬ伏兵が現れ、話題をさらっている。ソニー・ピクチャーズ・アニメーション製作、Netflix配信の『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』である。
その影響は、記録が可視化している。Netflixグローバル映画ランキング1位に輝いたほか、オリジナル・サウンドトラックが米ビルボード・アルバム・チャート「Billboard 200」で、映画サウンドトラックとして2025年最高位 となる3位に。SpotifyのUSAデイリーチャートでも劇中曲が1位、2位の再生数を稼ぎ出したのである。(※)
この驚きの記録を生み出した本作『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』は、果たしてどんな内容だったのか。まさに「キメラ的」といえる、その特異さが、どのように絶大な人気へとつながったのかを、ここでは考えていきたい。
主人公は、K-POP界で大人気の3人組ガールズグループ「HUNTR / X(ハントリックス)」。メンバーのルミ、ミラ、ゾーイは、ライブや楽曲制作など、日々忙しいスケジュールをこなし、ファンを魅了し続けている。しかし彼女たちは、人々を襲う超常的な存在「デーモン」と戦い、武器を振るって滅殺する「デーモン・ハンターズ」でもあったのだ。
K-POPは、いまやアメリカをはじめ世界中で支持を集めるグローバル現象となっている。BTSやBLACKPINKが米ビルボードチャートを席巻し、音楽にとどまらずファッションやSNSカルチャーなど、若者を中心に多方面に影響を与え、各国のポップカルチャーに自然に溶け込むほど浸透してきている。なので、K-POPがアニメーション作品の題材になるというのは、時間の問題だっただろう。
しかし、そこに「デーモンハンター」という要素を入れるという設定が奇抜だ。スターとしての活動と超常的なバトルをそれぞれ描いていくという内容では、さすがに忙しくなってしまうのではという懸念が当然生まれる。それだけでなく、敵対するデーモン側もボーイズグループを結成し、人気を集めたり、「HUNTR / X」のメインボーカルのルミの恋愛や、自身にデーモンの特徴が表れていることを秘密にしているなど、まるで“渋滞”が起こりそうなほどに、要素がつめ込まれているのである。
ルミ、ミラ、ゾーイたちが、食いしん坊だったり、イケメンに弱かったり、しばしば「ギャグ顔」になったりしながら、わちゃわちゃと仲良くしている姿、そして正体を隠しながら討伐をしている姿は、『美少女戦士セーラームーン』シリーズを思い起こさせる。
さらに、敵が時代を超えて生き続ける「デーモン」であり、それぞれの武器で対抗するところは、英語圏で「デーモンスレイヤー」というタイトルで認知されている『鬼滅の刃』に近いものがある。そして、メインボーカルのルミが秘密の感情を歌で表現する趣向については、『アナと雪の女王』シリーズにおけるエルサの同様の描写を想起させられる。つまり本作は、既存の人気作品の特徴を抽出し、一つの鍋で節操の無く煮込んでしまったような印象を受けるのである。
ここではそんな試みを、ことさら「パクリだ」などと指摘したいわけではない。そもそも映画、アニメ、サブカル業界は、既存の作品をミックスしながら、新たなものを生み出すものだ。本作では『エヴァンゲリオン』シリーズを思い起こさせる、ルミのキックが炸裂する場面があるが、その元ネタはそもそも『仮面ライダー』シリーズのライダーキックなのである。ここで考えたいのは、こういった闇鍋といえるまでにテイストの異なる人気作の要素を取り込んだスタイルが破綻せず、広く人気を得るまでに成功したということだ。
























