『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の恐るべき中毒性 全力の感情表現が愛おしい

Netflixアニメーション映画『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』を観てからというもの、この作品のことが頭から離れない。ハントリックスのことが、サジャ・ボーイズのことが好きで好きでたまらない。サジャ・ボーイズが米国Spotifyチャートで1位となった初のK-POPボーイズグループであることからも、この中毒性溢れる傑作の虜になっているのは自分だけではないことがわかる。

一方、本邦では肌感ではあるものの、映画好きの間でそれほど話題になっていないように思える。これはあまりにももったいない。なぜなら本作は日本の映画好き、ひいてはアニメ好きにも間違いなく刺さる作品だから。というわけで、本記事では『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の魅力をご紹介。
『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』はスタイリッシュなアクション映画であり、ゴージャスなミュージカル映画だ。世界的なK-POPアイドルが裏では邪悪な存在と戦うデーモンハンターであるという一見荒唐無稽な筋書きは驚くほど日本人の味蕾に馴染む。歌と踊りで悪と戦うのは、かなりジャパニメーションで慣れ親しんだ味だ。
そんな『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』について、まず知ってほしい一番のこと。それは『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023年)、『ミッチェル家とマシンの反乱』(2020年)の制作スタジオ「ソニー・ピクチャーズ アニメーション」の最新作であるということだ。この時点で「ムムッ」となっている人もいるのではないだろうか。現状、あまり知られていないが(筆者も本作を再生するまで知らなかった)、本作の魅力を知る上で一番重要な事実だ。

『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)でアニメーション映画の歴史を変えて以降、ソニー・ピクチャーズアニメーションがCGアニメーションの最先端を行くスタジオであることに異論はないと思う。『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』は間違いなくソニー・ピクチャーズアニメーションの技術力が遺憾なく発揮された最先端的傑作であり、言ってしまえばハリウッドの大手アニメーションスタジオが手掛けたアイドルアニメである。ソニー・ピクチャーズアニメーションと監督のマギー・カンとクリス・アペルハンスのコンビが手掛けたフレッシュなアニメーション表現はいたるところで発揮されている。洗練されたアクション、力強いライブシーン。なにより時に繊細で時にダイナミックな感情表現。

そう、『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の中でもひときわ異彩を放つのがキャラクターの演技だ。ライブパフォーマンスでの痛切で訴えかけるような表情。日常での躍動感溢れるコミカルな表情。その全てが魅力的で生々しい。特に後者に関しては『スパイダーマン:スパイダーバース』でペニー・パーカーが見せた漫画・ジャパニメーション的表現をさらに発展させ、韓国ウェブトゥーンを組み合わせた表情演技であり、全力で顔面を砕けさせた極(きわみ)・変顔みたいな表情を見せる。「変顔」という表現が相応しいのかわからない。サジャ・ボーイズのメンバーの腹筋がホットすぎて目がハートからトウモロコシに変わり、体温で温まってポップコーンになることを「変顔」以外でどう表現すればいいのだろうか。

ともかく、恐ろしいことにソニー・ピクチャーズ アニメーションはその革新的なアニメーション技術を変顔に全力投球している。しかし、これは決して馬鹿馬鹿しいことではない。ライブパフォーマンス時はどこまでも力強く完璧なスターなのに、3人だけの時は信じられないほど顔を崩してはしゃぐ。本作における極まった変顔は強烈な愛嬌であり究極的に素直な感情表現でもある。全力で顔面を崩壊させる姿にハントリックスの3人がどれだけ互いを信頼していて、愛し合っているかがよくわかる。そしてこの素直すぎる感情表現(そう、変顔というよりは素直すぎる感情表現なのだ)が最後の最後でグッと来るようになるので、誠実なマギー・カンとクリス・アペルハンス監督コンビはキャラクターの演技に全力投球していることがわかる。




















