『ONCE ダブリンの街角で』公開18年なんて「嘘だろ?」 映画館であの頃を思い出したい

『ONCE』は“あの頃”を呼び起こす

 物語は至ってシンプルで、ストリートミュージシャンの主人公がギター1本で歌い、音楽を通して人と繋がっていくというもの。ミュージシャンとして大成功するとか、大恋愛をするとか、決して劇的なことは起こりません。でも、少しずつ、音楽を通して生まれる心の距離の変化、アイルランド・ダブリンの美しさ、そしてシンプルにいい楽曲の数々……明らかに低予算映画なのに、画面に刻まれているものはあまりにもゴージャスです。

 人はどんなに嬉しかったことも、悲しかったことも、時間が経てば、当時とまったく同じ感情を思い出すことはできません。だからこそ、人は感情を留めるために、文章にしたり音楽にしたりするのだと思います。『ONCE ダブリンの街角で』の主人公の歌声には、まさに彼が人生で体験してきたであろう思いがありありと詰まっていました。そして、それを聴くことで、観客も自分にもあった“あの頃”を思い出してしまう。『ONCE ダブリンの街角で』が公開時に多くの人の心を揺さぶった理由はまさにここにあると思います。

 日本初公開から18年が経ち、今では配信でいつでも観ることもできる作品ではありますが、音楽が鳴り響く本作は映画館で観てこそ。劇場で音楽を全身に浴びて、“あの頃”を皆さん思い出しましょう。

■公開情報
『ONCE ダブリンの街角で』
渋谷シネクイント、新宿ピカデリーほか限定公開
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ、ヒュー・ウォルシュ、ジェラルド・ヘンドリック、アラスター・フォーリー、ビル・ホドネット
監督・脚本:ジョン・カーニー
製作:マルティナ・ニーランド
撮影:ティム・フレミング
作曲:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ
提供:キングレコード
配給:ポニーキャニオン
2006年/アイルランド/カラー/86分/原題:once
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