『それ妻』ダメ夫から『べらぼう』鶴屋まで 風間俊介はどんな役でも“ちゃんとそこにいる”

NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第25回「灰の雨降る日本橋」で、風間俊介演じる鶴屋喜右衛門が見せた“粋な計らい”に涙が止まらなかった。蔦重(横浜流星)とてい(橋本愛)の祝言の場に現れた鶴屋が差し出したのは、新調した「耕書堂」ののれん。長らく対立を続けてきた2人の和解の瞬間は、心を揺さぶる名場面として刻まれた。
これまで新参者の蔦重を徹底的に排除しようとしてきた鶴屋。第7回では「耕書堂さんが板元になることは、今後もまずございません」と冷たく言い放ち、その“目が笑っていない”笑顔は憎らしいほどだった。しかし第25回、浅間山の大噴火による灰が江戸に降り注ぐ中、すべてが変わった。

祝言の席に現れた鶴屋は「灰降って時固まる。これからは良い縁を築ければと存じます」と、吉原の面々に温かい言葉をかけた。四民の下とされ、市中の人々から差別されてきた吉原の人々にとって、江戸のど真ん中にある日本橋の名門書店の主人から「快くお迎えします」と歓迎されることの意味は計り知れない。
風間が演じる鶴屋の凄みは、単なる悪役に留まらないところにある。江戸の出版文化を支え、山東京伝(古川雄大)など若い才能を見出してきた板元として、蔦重の才能を認めながらも受け入れられない葛藤を、繊細な表情の変化で表現してきた。

そんな風間の演技の幅広さは、直近で放送された作品でも証明されている。『初恋、ざらり』(テレビ東京系)では、知的障害を抱えるヒロイン・有紗(小野花梨)と関係を築いていく福祉施設職員・岡村龍二を演じた。人との距離感に悩みながらも、まっすぐに相手を思いやろうとする誠実な人物像を、風間は柔らかく、繊細に表現。感情を声高に訴えるのではなく、抑制されたトーンとまなざしの変化で、優しさや葛藤を丁寧ににじませた。
一方、『それでも俺は、妻としたい』(テレビ大阪・BSテレ東)では、妻にセックスを拒絶され続ける42歳の売れない脚本家・柳田豪太を演じ、180度異なる演技を見せた。風間は「弱さや情けなさの究極系です。ここまで見せて良いの?と思うほど剥き出し」と語り、MEGUMIとの掛け合いで見せた情けない夫の姿は大きな話題を呼んだ。(※)妻に罵倒されながらも「それでも俺は、妻としたい」と奮闘する姿は、滑稽でありながらも切実で、風間は見事にその両面を演じきった。





















