『あんぱん』“次郎”中島歩が遺した速記術が拓くのぶの未来 津田健次郎が一癖ある役で登場

速記帳に残された次郎(中島歩)からの言葉に背中を押され、のぶ(今田美桜)は新たな一歩を踏み出す決意を固める。戦後の混乱の中でも、速記を身につければ女性にも職のチャンスがある。その現実を前に、のぶは自分の言葉で生きていく術を模索し始めた。
一方で嵩(北村匠海)のもとには、かつての戦友・健太郎(高橋文哉)が姿を見せる。『あんぱん』(NHK総合)第64話では、戦後という激動の時代の中で、それぞれが“再出発”を見つけていく姿が描かれた。
玄関に置かれていた速記の教本。それは、入院中の次郎がのぶに教えてあげるはずだった小さな希望のしるしだ。ページを開いたのぶは、その中に綴られた速記文字を目にし、はっとする。それは、言葉では伝えきれなかった想いを込めた、次郎からのメッセージだった。このささやかな遺言のような文字をきっかけに、のぶは速記の習得にのめり込んでいく。戦後間もない時代において、女性が速記を身につければ、よい仕事に就ける可能性がある。けれども、のぶが夢中になる理由は、それだけではない。彼女は何かを好きになったとき、そこへ向かって一直線に突き進んでしまう人だ。速記帳を開き、鉛筆を走らせる手つきに宿るのは、目の前の勉強ではなく、その先にいる次郎の気配なのかもしれない。

しかし、そんなのぶの姿を見て、節子(神野三鈴)は不安をにじませる。のぶが今、追いかけているものは、あくまで次郎の夢ではないか。未来へ進もうとするその足元が、誰かの想いに縛られていないか。そんな小さな心配事が節子の胸に残っていた。

そのころ、嵩のもとに、思いがけない人物が現れる。健太郎だ。軍務を共にした旧友との再会に、嵩は戸惑いながらも笑みを浮かべる。相変わらず人懐っこく、距離感を飛び越えて抱きついてくる“健ちゃん”の姿に、嵩は少しだけ心を緩めたようだった。2人は仕事を探して街に出る道中で、偶然にもメイコ(原菜乃華)と鉢合わせる。健太郎の無事な姿に、メイコは思わず涙をこぼし、再会を喜ぶ。もちろん、健太郎の『のらくろ』の一言とともに。戦争で分断されていた日常が、こうして少しずつつながり直していく光景は、それだけで胸にくるものがある。




















