『ヒックとドラゴン』北米V2 ファミリー映画乱立でピクサー新作『星つなぎのエリオ』苦戦

ピクサー新作『星つなぎのエリオ』北米で苦戦

 6月の激戦を制したのは、実写版『ヒックとドラゴン』だった。6月20日~22日の北米映画週末ランキングで、名作ゾンビ映画『28日後...』シリーズの最新作『28年後...』と、ディズニー&ピクサー最新作『星つなぎのエリオ』を抑え、No.1の座を死守したのだ。

 公開2週目の『ヒックとドラゴン』は、週末3日間で3700万ドル(前週比マイナス56%)を記録。北米興収1億6048万ドル、世界興収3億5818万ドルとなり、製作費1億5000万ドルをはじめとするコスト回収は既定路線だ(日本公開は9月5日)。

『ヒックとドラゴン』©2025 UNIVERSAL PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 もっとも『ヒックとドラゴン』でさえ、2週目の成績として期待されていた4000万ドルの壁には届かなかった。これには実写版『リロ&スティッチ』や『ベスト・キッド:レジェンズ』を含むファミリー映画の過剰供給が影響しているとみられ、ピクサー映画『星つなぎのエリオ』が苦戦に至ったのもまさに同じ原因だと推測されている。

 第3位『星つなぎのエリオ』は、北米3750館で週末興収2,100万ドルというピクサー史上最低のオープニング成績となった。ちょうど1年前、2024年6月の第3週には『インサイド・ヘッド2』が記録的大ヒットを叩き出したことを振り返ると残酷なコントラストだ。

 本作は宇宙を愛する少年エリオが、両親を失った孤独のなか、同じく孤独なエイリアンのグロードンと出会う物語。この世界には、きっと自分の居場所があるはずだと願っていたエリオは、星々の代表が集まる「コミュニバース」に招かれる――。『リメンバー・ミー』(2017年)や『私ときどきレッサーパンダ』(2022年)の気鋭クリエイター3人が監督を務めた。

『星つなぎのエリオ』©2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 2100万ドルという初動成績は、オリジナルアニメーション作品としては悪くないものの、前述の通りピクサー作品としては相当厳しい。ディズニーは北米だけで2500万~3000万ドルの滑り出しを期待していたが、現時点では海外興収1400万ドル、世界興収は3500万ドルという渋い結果になっている。

 モデルケースとなりうるのは、2023年公開のピクサー映画『マイ・エレメント』だ。北米オープニング興行収入は2960万ドルと低調だったが、口コミが功を奏し、海外市場での盛り上がりもあいまって世界興収は4億9644万ドルというヒットとなっている。

 『星つなぎのエリオ』も同じく観た人のあいだでは好評で、Rotten Tomatoesでは批評家スコア84%・観客スコア91%を記録。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A」評価、とりわけ24歳以下の層では「A+」評価を得ている。うまく話題が広がれば、激戦のサマーシーズンを乗りこなし、その後の配信リリースにもつながるだろう。日本では8月1日公開。

 現在のハリウッドでは、フランチャイズに頼らないオリジナルアニメーション映画の不振が続いており、これはピクサーにとって特に大きな課題だ。今後は『トイ・ストーリー』『Mr.インクレディブル』『リメンバー・ミー』の新作を控えているが、2017年の『リメンバー・ミー』以降、新たなシリーズの可能性を秘めた作品を送り出せていない。

 これはコロナ禍において、『ソウルフル・ワールド』(2020年)と『あの夏のルカ』(2021年)、『私ときどきレッサーパンダ』(2022年)という優れたオリジナル作品をすべて配信リリースとしたことの代償でもある。『マイ・エレメント』は最終的にヒットしたが、「映画館で観るべき」という盛り上がりを当初から創出できたオリジナル作品は長らく登場していないのだ。

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