興収で読む北米映画トレンド
実写版『ヒックとドラゴン』北米No.1発進、ヒットの方程式は『リロ&スティッチ』そっくり

実写版『リロ&スティッチ』の進撃を止めたのは、同じく人気アニメーション映画の実写化作品だった。6月13日~15日の北米映画週末ランキングは、実写版『ヒックとドラゴン』が初登場No.1を獲得。3日間で事前の予想を上回る8300万ドルを稼ぎ出した。
原作はドリームワークス・アニメーション製作『ヒックとドラゴン』(2010年)。バイキングの少年ヒックとドラゴンのトゥースが織りなす友情と冒険の物語で、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にノミネートされたほか、アニー賞では10部門を受賞。全世界興行収入5億ドルを記録し、続編映画2本やスピンオフ作品を含む人気シリーズの皮切りとなった。
驚くべきは、公開初日に劇場を訪れた観客のほぼ半数が13歳~24歳だったこと。実写版『リロ&スティッチ』と同じく、オリジナル版を子どもの頃に観ていた若い世代とファミリー層をうまくつかんだ。プレミアムラージフォーマット上映の需要もあり、IMAX上映の興行収入は全体の約1割にあたる810万ドルを記録している。
本作は予告編の再生回数が累計7億5000万回を突破するなど、かねて大きな注目を集めていた。米ユニバーサルはTVスポットや企業タイアップでさらなる露出を図ったほか、フロリダ州オーランドの新テーマパーク「ユニバーサル・エピック・ユニバース」の『ヒックとドラゴン』エリアでもプロモーションを実施。本作のヒック役メイソン・テムズとパーク内のヒックが対面する映像はTikTokで500万回以上再生されたという。
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海外市場でも興行収入1億1414万ドルを記録。メキシコ(1400万ドル)、イギリス(1140万ドル)、中国(1120万ドル)で優れた成績を達成しており、特に中国では実写版『リロ&スティッチ』を抜き、実写化作品としては5年ぶりの興行収入となった。今年公開のハリウッド映画としても屈指の好記録だという。
全世界興行収入は1億9784万ドル。製作費は1億5000万ドルだから、コスト回収はほぼ確実だろう。観客からの支持率も高く、Rotten Tomatoesでは批評家スコア77%に対し、観客スコア98%という圧倒的な数字だ。劇場の出口調査に基づくCinemaScoreでも「A」評価を受け、今後の口コミ効果にも期待できる。話題作が続々登場するサマーシーズンだが、長期的に存在感を示すことになりそうだ。
日本公開は9月5日。なお、ユニバーサルは実写版『ヒックとドラゴン2(仮題)』を2027年に公開予定だ。