『ゴッドファーザー』から『トロン』まで 長期間続編が制作されなかった映画シリーズ

長期間続編が制作されなかった映画シリーズ

 『トロン』シリーズの続編、『トロン:アレス』10月に公開されるとのニュースが入ってきた。

『トロン:アレス』©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 『トロン:アレス』は、『トロン:レガシー』(2010年)以来15年ぶりの続編で、その『トロン:レガシー』は『トロン』(1982年)の28年ぶりの続編だった。ヒット作の続編を制作する場合、普通それほど間を空ける戦略は取らないが、『トロン』のように稀に長期間空けてから続編が制作される場合がある。今回は『トロン:アレス』に関連し、長く続編が制作されなかったシリーズを取り上げていく。(※最低でも10年前後は間隔が空いているものを取り上げている)

『ゴッドファーザー PART II』(1974年)、『ゴッドファーザー PART III』(1990年)

 『ゴッドファーザー』シリーズは「映画史に残る名作特集」には欠かせない作品だろう。マフィア映画の地位を煽情的なものから芸術へと押し上げた同シリーズは、1作目(1972年)と2作目が連続でアカデミー賞の作品賞を受賞している。シリーズ映画は数あれど、2作連続の作品賞受賞作は他に存在しない。歴史に残る名作級の2作がわずか2年の間隔で公開されたのに対し、3作目の『ゴッドファーザー PART III』は16年もの時間が空いた。初登場時は大学を出たばかりの若者だったマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)は老境に達し、病を患っている。当然ながら続投した他のキャラクターも死去するか年をとっており、世代交代した新キャラクターも数多く登場する。間隔が空いたシリーズ作品にありがちなことだが、「老い」を感じさせる内容になっている。前2作ほどではないが本作も高く評価され、受賞は逃したもののシリーズ3作連続でアカデミー賞の作品賞候補にになった。以後も続編の噂は出続けたが、原作者で共同脚本家でもあったマリオ・プーゾの死去により可能性は限りなく低くなったと見られる。

『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』、(1983年)『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)

 SF映画の金字塔、『スター・ウォーズ』も『ゴッドファーザー』同様16年間新しいシリーズ作が公開されなかった。ファンの期待を一身に背負って制作された『スター・ウォーズ』の新たな三部作(ただし時間軸としては前日譚)だが、残念ながらその期待に応えたとは言い難い。『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002年)は2作連続でラジー賞の最低作品賞候補になってしまった。『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005年)からさらに10年の間隔を空けて新たな三部作が公開されたが、エピソード7~9もオリジナルの旧3部作ほどの評価を獲得したとは言い難い。新たな作品として『スター・ウォーズ/スターファイター(原題)』が2027年に公開されるとアナウンスされているが、評価はどうなるのかシリーズのファンならずとも気になるところである。

『エクソシスト2』(1977年)、『エクソシスト3』(1990年)

 ホラー映画史上初めてアカデミー賞の作品賞候補になった『エクソシスト』(1973年)もまた「映画史に残る名作特集」には欠かせない作品だろう。批評・興業の両面で成功した作品を映画会社が放っておくはずもなく、わずか4年の間隔で続編が発表されたが、興行収入は1作目の半分にも満たなかった。『エクソシスト2』は原作・脚本のウィリアム・ピーター・ブラッティも1作目の監督のウィリアム・フリードキンも参加しておらず、内容面での隔たりもかなり大きい。それから13年経ち、ブラッティの監督・原作・脚本で『エクソシスト3』が制作された。同時期に制作された『羊たちの沈黙』(1991年)を思わせるサイコホラー風の作風で新時代の幕開けを思わせる。有名作品ではないが、心のアーカイブにひっそり保存しているファンもいそうななかなかの佳作である。その後さらに『エクソシスト 信じる者』(2023年)が制作されたが評価は芳しいものではなかった。だが、さらなる『エクソシスト』が2026年に米公開されると報じられている。

『ハスラー』(1961年)、『ハスラー2』(1986年)

 往年の大スターだったポール・ニューマンが珍しくシリーズもので同じ役を再演した作品である。ニューマンは30代で演じた役を四半世紀にぶりに演じ、60代にしてキャリア初のアカデミー賞(主演男優賞)を受賞した。『ウォール街』(1987年)と『ウォール・ストリート』(2010年)で23年の間隔を空けて同じ役を演じたマイケル・ダグラスもそうだが、演じる役のポジションが主人公の師匠的なポジションに変わっている。『ロッキー』シリーズのロッキー・バルボアも『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)での再登場時は主人公の師匠ポジションに収まっていた。年を取ったら師匠ポジションに回るのは鉄板の設定なのだろう。

『羊たちの沈黙』(1991年)、『ハンニバル』(2001年)

 アカデミー賞史上でも稀な主要5部門すべてを制覇した不朽の名作も長年にわたって続編が制作されなかった。10年ぶりに制作された『ハンニバル』でめでたく長期のブランクを経ての再登場となったハンニバル・レクター博士は『羊たちの沈黙』では「主演」にカテゴリーするべきか議論になるほど登場時間は短かったが、『ハンニバル』では登場時間を大幅に伸ばした。だが、映画の評価は芳しいものではなかった。その後、アンソニー・ホプキンスは先日譚となる『レッド・ドラゴン』(2002年)でもレクター博士を演じたが、以降は演じていない。シリーズはリブートが繰り返され、『ハンニバル・ライジング』(2007年)ではギャスパー・ウリエル、『ハンニバル』(2013年~2015年)ではマッツ・ミケルセンが演じている。『刑事グラハム/凍りついた欲望』(1986年)でレクター博士を演じたブライアン・コックスはスコットランド出身、アンソニー・ホプキンスはウェールズ、ギャスパー・ウリエルはフランス、マッツ・ミケルセンはデンマークの出身である。これほど多くの異なる出身地の俳優に演じられた実写映画のキャラクターは稀だろう。

『トップガン』(1986年)、『トップガン マーヴェリック』(2022年)

『トップガン マーヴェリック』©2022 Paramount Pictures

 1980年代を代表するアクション映画の名作も長きにわたって続編が制作されなかった。36年もの時間を経てトム・クルーズが同じ役で復帰したが、多くの再演の例と異なり、ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル大佐は師匠ポジションと現場の戦闘機乗りを兼任する形で再登場した。新規のファンにもオールドファンにもたまらない再登場だっただろう。トム・“アイスマン”・カザンスキーを再演したヴァル・キルマーは咽頭がんですでに声を失っており、現実と同じく闘病中の設定で登場した。ヴァル・キルマーは本作が遺作となった。作品は興行・批評の両面で成功し、アクション映画には珍しくアカデミー賞の作品賞候補になった。

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