『ダメマネ!』“芸能事務所の裏側”に光を当てた意欲作に 川栄李奈の多面的な芝居が輝いた

日本テレビ系にて放送中のドラマ『ダメマネ! ーダメなタレント、マネジメントしますー』(以下、『ダメマネ!』)が6月22日にとうとう最終回を迎える。
初回の放送から、山田涼介のサプライズ出演が話題を呼んだ本作。ウサギの着ぐるみから登場した山田の眩しすぎる笑顔も記憶に新しいなか、ここまで新人マネージャー・隅田川道子(川栄李奈)の波乱万丈すぎるマネジメント奮闘記が、痛快なコメディテイストで描かれてきた。
かつては国民的な天才子役“神田川美和”として名を馳せながらも、現在は芸能事務所“TOYOプロダクション”に所属し、クセの強いタレントが揃う芸能4部のマネージャーを担当することになった道子。ドSな上司・犀川(安田顕)の思うがままに操られながらも、昔取った杵柄でもある抜群の演技力で、売れる気配のないタレントたちに本音と脚色が入り混じった“セリフ”をぶつけていく。

そんな本作の魅力は何といっても、主人公の道子を演じる川栄李奈の“多面的な芝居”だろう。シチュエーションに応じて分割された喜怒哀楽の感情が、道子という役柄に流し込まれ、情緒豊かに躍動する姿はなんとも魅力的。
劇中では爽やかに笑顔を振りまく姿から一転して、烈火の如きツッコミを容赦なく畳みかけるシーンも多い。そんなギャップのある姿さえも、自然と彼女のキャラクターが持つ一面だと信じられるところが川栄の芝居の魅力に他ならない。

頼りない先輩マネージャーの木村(千葉雄大)とふたりきりのときは、若干、舐めた口調で小突きあいながら、漫才コンビのような掛け合いを披露。対してTOYOプロの看板スターとして活躍する真田(山田涼介)には、その芝居がかった仕草を小馬鹿にしながらも、気を許しておどけた表情を見せる。
道子は直接、本人に嫌味を伝えたり、思ったことをすぐに口に出したり、調子に乗った結果、盛大に失敗してしまうこともしばしば。しかし、露骨に態度は変えながらも、キャラクターの幹となる素直な部分はブレていないからこそ、いくつもある一面が道子の魅力として映し出されていた。そして、独善的な彼女をどこか憎めないのは、川栄がセリフも表情も最大出力のフルパワーでこなしているのが目に見えるからだ。
さらに、コミカルにもシリアスにも振り切れる川栄の芝居に呼応して、個性豊かなキャスト陣は息のあったコンビネーションを炸裂させる。濱田マリや橋本じゅんらが扮する一癖も二癖もあるタレントが集結する芸能4部の控室での会話は、どれも腹の底から笑えるシーンに仕上がっていた。

短いカット割りでテンポよく繰り広げられる掛け合いは、本作の監督を務めた瑠東東一郎の得意とする演出。加えて、作品内で嫌味な記者・水島を演じる岩崎う大(かもめんたる)が第4話・第5話の脚本を担当しており、生っぽいセリフとリアルな質感で綴られるストーリーは異彩を放っていた。
近年、世の中から切り離された“ブラックボックス”と化しているのが芸能界であり、内側が見えないからこそ好奇心を抱いて、おもしろおかしく想像をめぐらせる人も少なくない。
2023年のアニメ化を皮切りに、翌年にはドラマ化・映画化を果たした『【推しの子】』もまた、煌びやかな芸能界の光と闇を織り交ぜて赤裸々に描くストーリーが話題となったが、『ダメマネ!』ではあくまで“マネージャー”という仕事を支柱にして、芸能事務所の裏側で起こるトラブルやハプニングに対応する姿に焦点を当てる。