2025年秋アニメとは何だったのか 『ワンダンス』『矢野くん』など“ガチ勢”的5選を総括

2025年秋アニメ“ガチ勢”的傑作5選

 2025年の秋アニメは、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』や『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』をはじめとした劇場大作の話題が席巻し、比較的テレビアニメの存在感が小さかったように思われる。

 しかしテレビアニメにも、大きな話題にはならなかったものの独自の魅力を備えた作品も多い。

 そんな個性豊かな作品溢れる2025秋アニメから、今回は5本のアニメを紹介したい。

『ワンダンス』

【1~3話】ワンダンス 見逃し特別無料配信!#期間限定 #公式アニメ ※4話は11月5日(水)まで

 アニメではほぼ描かれることのなかったストリートダンスをテーマとした作品だ。ストリート風のビジュアルがアニメに登場することは少なく、それ自体がまず新鮮であり、加えてダンスシーンでは30曲を超える豊富な挿入歌とともに3DCGを用いた正確なダンスが展開される。日本において3DCGによるキャラクター描写はここ数年で受け入れられてきてはいるものの、未だにセルルック作画の人気が根強い。しかし『ワンダンス』においてはダンス部の大人数での集団パフォーマンスなど、作画では難しい描写を、3DCGだからこそテレビアニメで実現できている。手のアップシーンでは作画を挟むなど、上手く両者をハイブリッドし、満足感を与えてくれる。

 加えて本作のダンスシーンは、たとえばアイドルアニメのキャラの顔を見せるために作られたライブシーン映像とは異なり、表情でなく動きに重点をおいていて、ダンスを主題とした作品ならではだ。ダンスのジャンルや傾向を含めて見事に表現しきった本作の映像は、カメラワークやライティングも含め、ダンス未経験の視聴者であっても楽しめる設計になっている。

 ダンスシーンもさることながら、そこを下支えするキャラクターの動機や実在感が充実している点も『ワンダンス』の特徴だろう。

 吃音症により言葉でうまく伝えることができなかった主人公の“カボくん”をはじめとして、ダンスに打ち込むまでのバックグラウンドも明確に描かれており、物語としての説得力も十分にある。

 また、下校時に映る富山の風景や湾田さんのバイト先であったコンビニなど、彼らの生きている空間も時折描かれるが、スタイリッシュなストリートとのギャップも含めて、キャラクターたちの実在感が立体的になっている。

 奥行きのあるキャラクターたちが見せる普遍的な人間ドラマを楽しみつつ、多くの人にとって未知の世界であるストリートダンスに触れることができる名作だ。

『SANDA』

TVアニメ『SANDA』オープニング映像|yama「アダルトチックチルドレン」

 『BEASTARS』で知られる板垣巴留の同名漫画原作のアニメ化作品。『映像研には手を出すな!』などを手掛けたサイエンスSARUによるハイクオリティな映像も大きな見どころの一つだ。

 サイエンスSARUの前作『ダンダダン』までは創設者の湯浅政明的なニュアンスが随所に感じられていたが、本作ではそのクセが適度に抜けつつハイクオリティを維持した映像に仕上がっており、今までのサイエンスSARU作品とはまた違った面白さがあり、新しいサイエンスSARUへの過渡期を感じさせてくれる。

 映像に限らず内容面も新鮮だ。サンタクロースの末裔であり、14歳でありながらサンタクロースという老人へ変身できてしまう少年・三田一重を中心に大人と子どもについて、様々な設定を展開する。少子化により過度にトラウマを除去して子どもを育てる教育方針や、老いを拒絶し手術により執拗に肉体の若さを保とうとする大人たちをはじめとしたSF設定。少年漫画的な戦闘を可能にするサンタクロースの逸話に基づく体質や戦闘能力など、毎話予想外の角度から情報が開示され、目を離すことができない。

 連鎖的にあらゆる要素や社会問題を提示し、ときには子どもによる殺人の可否など思考実験めいたドラマを展開することさえある。特殊なディストピアのいびつな社会制度によって生まれたキャラクターたちの瑞々しい悩みを扱う本作は、設定の奇抜さとは裏腹に、丁寧で実直に子どもから大人へと移ろいゆく中学2年生といった繊細な時期の心情を描くことを欠かさない。

 ユニークな設定と派手なバトルと思春期の心理描写が不思議なバランスで組み合わさった唯一無二の作品だ。

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