松田元太の“まっすぐさ”が響く理由 『人事の人見』でにじみ出たヒューマニズムを総括

「ストレス社会で頑張る、みんなの味方。」
そう掲げられているとおり、ドラマ『人事の人見』(フジテレビ系)は新卒採用、副業、子育て、早期退職、古い考え方に基づいた風潮、パワハラ……と会社員が直面するかもしれない様々な出来事において寄り添い、解決に導いてきた。
主人公の人見廉(松田元太)はアマゾンの山奥で文房具メーカー「日の出鉛筆」の常務である里井(小日向文世)と出会い、意気投合。社員として人事部に引き入れられた。人事部のメンバーは、さぞ優秀な人がやって来るのだろうと期待をしていたが、社会人経験ゼロで無鉄砲な人見が来たことに、動揺を隠せずあたふた。その間にも人事部には様々な社員からの悩みが届く。

あれこれと今までのノウハウを駆使して穏便に対処しようとする人事部だったが、人見は一旦その現状をしっかりと自分の中に落とし込み、後先考えず当事者と向き合おうとする。……が、彼の突飛なアイデアが必ず解決に導くというわけでもない。彼の行動をきっかけに、人事部総動員で問題を解決していくのだ。人事部のメンバーのやりとりもコミカルで、筆者にとっては少しお堅いイメージのある人事部が、机に向かって考える姿だけでなく、動き回って試行錯誤する姿はとても新鮮であった。
本作は、松田元太にとって初の単独主演ドラマ。松田の人間性にほれ込んだ制作陣が当て書きでキャラクターを作り上げた。純粋に人が好きな人見は、人と向き合い、時には涙を流す。ただハチャメチャなことをするのではなく、細かいことにも気が付き悩む姿は視聴者に寄り添ってくれるものであり、今まで真面目な社会人役から元気な高校生役までこなしてきた松田の一つの集大成だと言える。

また本作は、誰とも会わずに一日を終えることも珍しくない、人間関係が希薄になっている現代社会において、人と向き合うことの大切さも教えてくれる。たとえば第2話では、プロジェクトのコンペティションの大詰めを迎えた商品企画部の植木(珠城りょう)が勤怠をつけずに遅くまで残業していることが明らかになる。きっと誰かの指示で無理矢理残業を強いられているのだろう……そう思っていたところ、実は本人が商品に強い思い入れがあって、負けたくない気持ちが強いために、チームの仲間に頼らず自主的に残業をしていたのだった。人見によって集められた植木とライバル社員、そして植木の夫は意図せず閉じ込められるが、それによって真正面からぶつかり合い、よりよい商品を作り上げることに成功した。

第4話では人見が研修制度を利用して営業の仕事を体験することに。そこは体育会系の部署で、まるで軍隊のように統率されており、自分らしさを出すことは難しい雰囲気だった。そんな中、営業部の一人・清川(ドリアン・ロロブリジーダ)がドラァグクイーンであることが明らかになり、それをきっかけに多様性が強調されるようになるが、部長は全く耳を貸さない。しかし人見が提案した催しを通して、厳しく全員を統率していた部長の本音が次第に明らかになり、結果として営業部全体の雰囲気向上につながった。





















