水瀬いのりが目指す“親しみあるヒーロー”像 「7位というポジションは“めっちゃ安心”」

フジテレビほかにて毎週日曜9時30分より放送中のTVアニメ『TO BE HERO X』。人々からの「信頼」がヒーローを生み出す世界で、トップランクのヒーローたちが唯一絶対のヒーロー「X」の座をかけて戦いを繰り広げる。
水瀬いのりが演じるのは、幸運を武器にヒーローとなった少女・ラッキーシアン。ランキング上位者の一人として、シアンもまたトーナメントに挑む。bilibiliとアニプレックスがタッグを組んで制作するアニメでもある本作。特殊な収録の様子とともに、自身と重なる部分も多いというシアンの役作りへのアプローチに迫った。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
ラッキーシアンの役作り

——シアンのエピソードでは、赤ん坊の彼女が泣き声を上げるところから10代後半を迎えるまでのストーリーが目まぐるしく描かれます。役作りで大変なことはありましたか?
水瀬いのり(以下、水瀬):『TO BE HERO X』にはオムニバス形式で各キャラクターが主役になる“お当番回”があって、それぞれがヒーローになるまでの過程が描かれます。シアンのエピソードは幼い彼女が泣き声を上げるシーンから始まって、見知らぬ土地に預けられ、ルオと出会い、そしてヒーローになっていくという流れのなかで彼女の成長がたくさん描かれていたので、すごくやりがいを感じました。「いったいどこがシアンの“等身大”なのかな」と彼女の心の年齢みたいなものを探るようなところもあって、演じていて楽しかったです。幼少期もその年齢の子供らしくいられなかったシアンが、成長していく過程で喜びや無邪気さといったものを取り戻していきながら本当の自分を解放していく物語でもあります。彼女を作る基盤となるような部分を短いなかでギュッと演じられて、自分にとってシアンの理解度がとても高まったなと思います。

——ラッキーシアンという人物は水瀬さんから見てどのような存在でしょうか?
水瀬:シアンは「幸運」という力を手にしていなかったら、きっとヒーローにはならなかったのかなと思うくらい、運命に、その力に翻弄されている少女だなと感じました。能力や自分の置かれている状況にすごく悩まされています。「ラッキー」だということが、他人からは羨まれることでも、彼女にとっては悩みや足枷に感じる部分があるなかで、それと向き合い、逃げ出さなかったからこそ、ヒーローという道にたどり着いたんだと思います。シアン以外のヒーローについては私もオンエアでアニメを観させていただいているので、いち視聴者としてそれぞれのヒーローのエピソードを楽しんでいるのですが、シアンはかなりイレギュラーなタイプだったんじゃないかなとは思います。
——一見すると「幸運」というのは羨ましい体質のように思われますが、シアン本人にとってはちょっと重いエピソードですよね。
水瀬:そうですね。自分の持っている「幸運」というものが、意図せず他者を引きつけてしまうというところですよね。他者に利用されてしまったり、他人から「価値」として見られたりするのはやっぱり少し寂しいのかなと思います。「“ラッキー”シアン」ではなく一人の人間としての「シアン」だったら彼女はどんなことを感じるんだろう、みたいなことはすごく考えて演じました。“ラッキーな”シアンだから必要とされているのか、たとえラッキーではない“シアン”という一人の存在だったとしても隣にいてくれたのか、というところがルオと他の人たちとの間にある境目だったのかなと思います。

——もし水瀬さんも、先天的に持っている才能が周囲から過度に特別扱いされて、そのせいである種の孤独を感じてしまうような人生を送っていたとしたら、どのように感じると思いますか?
水瀬:どうなんだろう……。少なくとも、今の人格ではいられないのかなと。だからシアンはすごいなと思います。シアンの生い立ちについては作中で深く描かれますが、それを観ても彼女がただの「ラッキー」だと感じるのかというところは視聴者の方にも最後まで見届けてほしいなと思います。やっぱり代償や対価というようなものは必ずあって、「すべてがうまくいく」「すべての幸せを得る」ということは絶対にありえないんじゃないか、どんなにハッピーでも悲しいことは絶対にあると常日頃思っているので。でもそういうものの繰り返しが人生でもあるのかなと考えています。だから私もシアンのように人並外れた幸運、ラッキーみたいなものを受け取るとなれば、恐怖のほうが勝ってしまうかもしれません。「いったいこのあとどんな不幸が待っているんだろう」と。ただただ幸せを全力で受け止める覚悟は私にはないかもしれないです。






















