『続・続・最後から二番目の恋』が描く“老いへの賛歌” 随所にフレンチのような隠し味が効く

『最後から二番目の恋』が描く老いへの賛歌

 いぶし銀の役者が揃う『続・続・最後から二番目の恋』にあって、ひときわ目を引くのが小泉今日子の芝居だ。それはおそらく等身大の姿だからだろう。

 小泉はかつて、目立つようになった白髪を猫になぞらえて、どちらも手間のかかるところが似ているとユーモアたっぷりに表現した。(※1)その話し振りからは白髪に親しみを感じていることがうかがえる。小泉演じる千明が白髪を生かした髪型にしてもらったと胸を張るシーンがあるが、まさに小泉そのものだ。

 小泉は検察庁の法改正案に反対したり、旧ジャニーズや松本人志をめぐる問題にも臆せず声をあげたりしてきた。芸能人が政治的発言をするな、という声に対しては、ひとりの国民として当然のことといなしている。(※2)歯に衣着せぬ千明の物言いも、やっぱり小泉そのものである。

小泉今日子の“働く女性としての矜持” 『続・続・最後から二番目の恋』が切り込む労働問題

『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)が盛り上がっている。なにしろ、シリーズ3作目だ。すでに確かな固定ファンを獲得してい…

 忘れてはならないバイプレイヤーが鎌倉という舞台だ。ときには悩みつつも、老いを前向きにとらえようとするふたりを描こうと思えば、これほどふさわしい舞台はそうはないだろう。折に触れてカットインする海辺や江ノ電のシーンは長閑と形容するのがしっくりとくる。段差のないところでつまずく姿も、スマホを覗き込む姿も、鎌倉はやさしく包み込んでくれる。

 この街の絶妙な隠し味になっているのが挿入歌の『Go To The River』だ。ヤエル・ナイムのしっとりとした歌声はさながらガストリックの余韻を残す。

 ガストリックは、砂糖と酢を煮詰めて作るフランス料理に欠かせない甘酸っぱい調味料。仕上げに回しかければぐっと料理にコクが出る。

 もうひとつのガストリックがリラックス感溢れるスタイリングだ。ピンヒールから一転、ペタンコのシューズに足を滑り込ませるようになった千明はパリのマダムよろしく泰然自若としている。服のシルエットも丸みを帯びた、やわらかなそれに変わった。洒脱なBGMとスタイリングもまた、老いへの賛歌として機能している。

 『続・続・最後から二番目の恋』は人生の折り返し地点を遠く見やる人々のみに向けたドラマではない。誰しも“未来に恋をしたくなる”日々の暮らしが紡がれる。

参照
※1. https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/1610479/
※2. https://bunshun.jp/articles/-/67582

『続・続・最後から二番目の恋』の画像

続・続・最後から二番目の恋

鎌倉を舞台に、テレビ局プロデューサーの主人公と、市役所で働く公務員の恋を描いたロマンチック&ホームコメディ。2012年1月に第1期の連続ドラマ、同年11月にスペシャル版、2014年に第2期が放送され、本作はその続編となる。

■放送情報
『続・続・最後から二番目の恋』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:小泉今日子、中井貴一、坂口憲二、内田有紀、飯島直子、久保田磨希、松尾諭、佐津川愛美、白本彩奈、広山詞葉、美保純、柴田理恵、浅野和之、渡辺真起子、森口博子、石田ひかり、三浦友和ほか
脚本:岡田惠和
プロデュース:若松央樹(フジテレビ)、浅野澄美、郷田悠(FCC)
演出:楢木野礼、高橋由妃、西岡和宏(フジテレビ)
主題歌:浜崎あゆみ「mimosa」(avex trax)
制作協力:FCC
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/nibanmeno_koi/
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