佐野史郎、渡部篤郎、鈴木浩介らの“怪演合戦”が白熱 『Dr.アシュラ』を支える名俳優たち

どんな患者でも受け入れる救急科の医師・杏野朱羅(松本若菜)の奮闘をダークに描くドラマ『Dr.アシュラ』(フジテレビ系)が現在放送中だ。
救急の要請を予測し、すぐに電話を取る杏野。しかし重症患者を受け入れることは、杏野が働く帝釈総合病院ではできる限り避けられている行為だった。理事長の阿含(片平なぎさ)を取り巻くメインキャラクターたちが、患者を死亡させてしまうなどのもしもの事態で病院の名、ひいては自身が失墜することを避けるため、その方針を取っていたのだ。しかしそんな彼らに囲まれながらも自分のやるべきことに集中し、医師として患者を救おうとする、杏野の姿勢が本作の見どころだ。
名俳優たちが演じている自分勝手なメインキャラクターたちは、個々に“訳ありな医師”にならずにはいられない理由を抱えている。
例えば、佐野史郎演じる院長の不動は、自分のキャリアのために問題を起こしたくないと思っている人物だ。赤字続きの救急科があること自体も良く思っていない。佐野のキャスティングは、院内の険悪で不気味な雰囲気を作り出すのに最も適していると言える。何か本性を隠し持っていそうな気がするのだ。実際、現在放送中のドラマ『魔物(마물)』(テレビ朝日系)でも小説家で教授の野田として、『Dr.アシュラ』とは異なる不気味さを見せている。『魔物(마물)』で彼はセクハラで訴えられた上、ワイングラスを妻に投げる暴力的な点もあり、第1話では殺害されてしまう。出演時間は多くないものの、物語のキーパーソンらしく余韻を残した演技を見せた。

また、そんな院長の不動にごまをすり、簡単に患者を見捨てようとする外科科長の金剛(鈴木浩介)の存在もかなり厄介だ。金剛は完全に不動のいいなりであり、患者に対応できる医師が金剛しかいなかった時も、「今は忙しくて手が離せない」と嘘をつき、なんとケーキを頬張っていた。おだてられると笑いが止まらなくなるその姿と、ちょび髭できちっと七三分けした髪型がどうも憎たらしいが、そう思ってしまうのも鈴木自身のバイプレーヤーとしての力あってこそ。彼はなぜそこまで上の顔を伺うのか、そして杏野と関わるうちに変わっていくのか。謎が明らかになっていくのか、今後の展開に期待したい。

一方、救急科科長の大黒(田辺誠一)は、患者を救いたい気持ちがあるように見えるが、杏野にルールを破らせたら次は降格だと言われてしまったため、頑なに重症患者を受け入れないという姿勢を見せている。しかし第2話では自分の息子が患者であることを知り、受け入れて処置を施すことになった。自分ごとになると、不要だと思っていたものがどれだけ重要なことだったのか分かる。杏野もまた救急に助けられた過去があるようで、そのような経験が人間を動かすのだろう。

さらに、本作のキーパーソンとなるのは、救急科の元科長で、杏野の師匠でもある渡部篤郎演じる多聞ではないだろうか。かつて杏野と日本の救命を変えることを約束した多聞は、陰鬱な雰囲気を纏って帰ってきたかと思えば、なんと救急科の閉鎖を検討し始めるのだ。そんな多聞と同じように、渡部演じる真意が掴めないようなキャラクターと言えば、近年では『かしましめし』(テレビ東京系)があった。ヒロイン千春(前田敦子)の恩師で、彼女と頻繁に会うものの、特に関係が発展するわけでもない。何を考えているのか言動からは推測できないような、不思議な雰囲気が良く似合う。これからの杏野との関係や、多聞を敵視する不動との関係も大きく動くことになりそうだ。





















