興収で読む北米映画トレンド
『サンダーボルツ*』北米No.1、批評家・観客の大絶賛受けて好スタート

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作『サンダーボルツ*』が、2025年のサマーシーズン開幕を飾った。5月2日~4日の週末3日間では興行収入7600万ドルを記録し、週末ランキングのNo.1を獲得。事前の予想を上回る好スタートとなった。
この数字は、MCU映画の前作『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』のオープニング成績8884万ドルを下回るものだが、同じ条件で比較すべきではないだろう。
本作は『ブラック・ウィドウ』(2021年)や『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021年)などに登場した準主役級のアウトローを集結させたチームアップ映画で、キャラクターの知名度などを鑑みての訴求力は『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年)や『エターナルズ』(2021年)と同程度。『サンダーボルツ*』の初動成績は、これら2本を上回るものだった。

出演者はフローレンス・ピューやセバスチャン・スタン、デヴィッド・ハーバー、ワイアット・ラッセル、ハナ・ジョン=カーメン、ルイス・プルマン、ジュリア・ルイス=ドレイファスといった演技巧者たち。監督はNetflixシリーズ『BEEF ~ビーフ~』のジェイク・シュライアーが務めた。
ポイントは、『サンダーボルツ*』がMCU映画として久々の高評価を受けていることだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア88%・観客スコア94%を獲得。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」評価となった。別の出口調査でも、回答者の75%が「続編を観たい」と答えているように、観客の満足度はすこぶる高い。過去に登場したキャラクターを中心としながらも、物語の焦点を絞ることで作品の独立性を保ち、しかも巨大なMCUのストーリーに接続してみせた作劇の勝利だろう。
ちなみに本作のラストはいわゆる“ネタバレ厳禁”の類だが、なんとマーベル・スタジオは週末3日間が終わるタイミングで、最大のサプライズを早くも明かしにかかっている。現地の広告では、『サンダーボルツ*』というタイトルに付された「*(アスタリスク)」の意味がさっそく公表されているのだ。このことを含めた多角的な口コミ効果で、新旧MCUファンを中心に観客動員を伸ばしていく作戦とみられる。
海外市場では8610万ドルを記録し、現時点での全世界興行収入は1億6210万ドル。製作費は1億8000万ドルだから、やはり順調な滑り出しだ。

『アベンジャーズ/ドゥームズデイ(原題)』を1年後に控えたMCUは、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』を7月25日に日米同時公開予定。『サンダーボルツ*』を追い風にして、MCUは再び絶頂期を迎えることができるか?



















