松本まりかの芝居に宿る“含み”の妙 『人事の人見』でのゲームチェンジャー的存在感

松本まりかの芝居に宿る“含み”の妙

 放送中のドラマ『人事の人見』(フジテレビ系)が回を重ねるごとに面白くなっている。なかなか突拍子もない展開が次々と生まれる作品なのだが、それは常識などに囚われない主人公・人見廉(松田元太)の存在に起因している。彼はいつだって自由で、どこだって伸び伸びと生きるキャラクター。周囲の誰もが彼に翻弄され、一丸となって痛快なドラマを織り成しているところだ。そんな人見を囲む面々も個性的。ここでは堀愛美という人物に注目してみたい。演じているのは松本まりかである。

 Travis Japanの松田元太が主演を務める本作は、大企業の“人事部”に焦点を当てたオフィス・エンターテインメントだ。古い体質の残る「日の出鉛筆」の人事部に、あまりにもおバカでピュアな青年(=人見)がやってきたところから物語ははじまった。彼は海外企業からヘッドハンティングされた超エリートなのだともっぱらの噂だったが、実際には社会経験がほとんど皆無の人物で、一般的な常識さえ欠けている。けれどもこの常識はずれの彼が、凝り固まった価値観によりがんじがらめになった人々を解放に導いていくのである。

 本作で松本が演じる堀は、人見にとって人事部の先輩。以前は秘書課にいたらしく、社内の事情に精通しているどこか謎めいた存在だ。人見たちが向き合う問題解決のため、さまざまな社員の情報を独自に入手してくることもしばしば。いわゆる“できる”人物であり、つねにどこか余裕を感じさせる存在でもある。「日の出鉛筆」の新ヒーローにしてトラブルメーカーでもある人見の突飛な言動には興味を寄せていて、ふたりの関係性が目の前の問題を好転させることもある。第4話ではこの堀にスポットライトが当たった。

 先述しているように、人見を囲んでいるのは個性的な面々。彼の言動に呆れながらもともに奮闘する真野直己(前田敦子)を筆頭に、社内の人間模様をマンガにしている物静かな森谷詩織(桜井日奈子)や、口ばかりで仕事をしない上司の須永圭介(新納慎也)など、じつにさまざまだ。この人々の中で堀は、決して自身の考えを強く主張したりしない。だから松本の演技も、前に出ようとするものではない。けれどもそこに、“含み”があるのを感じていた。物語がはじまったときから、とてもミステリアスな存在だったのだ。

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