『キャスター』異例の“脚本家6人体制”の狙いは? ハリウッド方式がもたらす長所と短所

『キャスター』異例“脚本家6人体制”の狙い

 しかし、本作でもっとも注目すべきポイントは、6人もの脚本家がクレジットされていることだろう。予算と時間に余裕があるハリウッドでは10人から20人の脚本家がチームでプロットを練り上げ、分業しながら全体の脚本を仕上げていく、いわゆる「ライターズルーム方式」が主流となっている。日本でも、2022年に放送されたNHK土曜ドラマ『3000万』や2023年にPrime Videoで配信された『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』がこの方式を採用し、一定の成果を残してはいる。ただ、今でも1人の脚本家が仕上げることが基本パターンである日本のドラマ界においては『キャスター』の脚本家6人体制は“異例”だ。

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 この手法のメリットは、20のアイデアのうち、19がボツとなっても、採用された1つが高クオリティである可能性が高いこと。ただし、当然リスクもある。実は2023年の日曜劇場『Get Ready!』(TBS系)でも6人の脚本家がクレジットされていた。にもかかわらず、最終回は第5話のみに共同執筆で参加した脚本家が単独で執筆。「ライターズルーム方式」が機能していなかったのか、作中全体としても統一感に欠け、各人の視点がバラバラに作用してしまったのか、各話ごとのトーンが不安定な印象に。実際、作品の評価も芳しいとは言えなかった。

 『キャスター』がこの6人制脚本体制をどのように機能させているのか、明確な情報はまだ少ない。しかし、報道という複雑で繊細さがジャンルを描くにあたり、現場取材を含めた多様な視点の導入と、専門性の確保が求められるのは間違いない。実際にあった事件をモチーフにしていることもあり、この体制は作品の“リアリティ”を支える要素であると同時に、“荒唐無稽になりすぎない”ためのブレーキにもなっているのではないか。

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 日曜の夜をエンタメとしての快楽と、社会派としての思考の刺激で満たそうとしている『キャスター』。このまま春ドラマの主役に踊り出るかは、6人の脚本家の“知の結集”にかかっていそうだ。

『キャスター』の画像

日曜劇場『キャスター』

テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。

■放送情報
日曜劇場『キャスター』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、堀越麗禾、山口馬木也、黒沢あすか、オクイシュージ、山中崇、相築あきこ、馬場律樹、北大路欣也、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
主題歌 tuki. 「騙シ愛」(月面着陸計画)
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/caster_tbs/
公式X(旧Twitter):@caster_tbs
公式Instagram:caster_tbs
公式TikTok:@caster_tbs

 

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