佐野晶哉、Aぇ! groupを牽引する二刀流の手腕 “リアクター”として『Dr.アシュラ』で光る

佐野晶哉、Aぇ! groupを牽引する二刀流の手腕

 「はあ~……」という佐野晶哉の大きなため息から始まったドラマ『Dr.アシュラ』(フジテレビ系)。彼は当直を任された研修医として、重症患者が来たらどうしよう、という不安を滲ませた。

 重症患者は他の病院に回すという院長の指示が下りている病院。本作は、そんな病院に居ながら、どんな患者も助けようとする杏野朱羅(松本若菜)を主人公に、救急科の壮絶な日々を描いた物語だ。佐野が演じる研修医・薬師寺保、通称“坊主”は、血だらけでやってきたヤクザを前に「僕じゃ無理です」と怖気づいたりと、少し頼りのない性格。だが、彼は、自分にはできるという自信も併せ持っている。それゆえにパニックを起こし、朱羅に「修羅場にもう一度なんかない」と言われてしまう。

『Dr.アシュラ』第2話場面写真©︎フジテレビ

 無表情で淡々とこなす朱羅に対して、感情表現が豊かな保。朱羅の技術に驚いて、朱羅に助けを求めて、実力のなさに落ち込んで……と、佐野は第1話だけでも多くの表情を見せてくれた。GP帯連続ドラマ初出演という緊張感はあるものの、ダークな雰囲気で進んでいくストーリーには欠かせない光になってくれるだろう。インタビューにおいて、「僕が演じる保が“リアクター”として、視聴者の目線に最も近いキャラクターなんだろうなと強く感じました」と語っていた通り、視聴者に寄り添ってくれる役柄でもある(※)。

 2019年に結成され、2024年にCDデビューを果たしたAぇ! groupのメンバーである佐野。学生時代は音大で学び、ドラムにピアノ、そしてサックスも操ることができるなど音楽に囲まれてきた彼は、『20歳のソウル』で映画初出演を果たした。

 船橋市立船橋高校吹奏楽部に所属し、野球部の応援歌を作曲した大義(神尾楓珠)がわずか20歳で亡くなるまでの姿を追う、実話に基づいた物語。佐野はピアノと打楽器を担当する大義の親友・佐伯役を務めた。曲を聴いただけで譜面に書き起こせる佐伯は一歩引いた立場にいて、「音楽はやりたいんですけど団体行動が好きじゃないんです」とコンクールに出るべきか悩みを見せる。映画初出演ながら顧問役の佐藤浩市と対峙し、学生時代ならではの繊細な感情を表現する演技で俳優としても大きな一歩を刻んだ。

 映画『明日を綴る写真館』では、『20歳のソウル』で共演した平泉成と佐藤浩市と再共演。名俳優が勢ぞろいする中、人気ながらも孤独を抱えた写真家・太一を演じた。物語は“音の鳴る”写真を撮る鮫島(平泉成)の元に、太一が弟子入りするところから始まる。写真を通して家族や自分と向き合い、次第に気持ちが晴れやかになっていく姿に心がホカホカとしてくるはずだ。佐野が持つ雰囲気と映画全体の温かみがマッチしていた。

Aぇ! group 佐野晶哉が平泉成から受け継ぐ役者魂 “普通”で素敵な自分を築くために

写真というものは不思議だ。プロのカメラマンが撮影したものはもちろん素敵でカッコいいものだが、プロとしての活動をしていない、いわゆ…

 また、兵庫を舞台にコロナ禍でギリギリの生活を強いられた人々に焦点を当てたドラマ『あなたのブツが、ここに』(NHK総合)では、キャバ嬢でシングルマザーの主人公・亜子(仁村紗和)が昼間に働くことになる宅配会社のドライバー・健太役に。亜子を見るや否や子犬のような人懐っこさで近づき、しつこいと言われてもめげずに彼女を支えようとする。コロナ禍が舞台であるためほとんどの人物がマスク越しで、「あの時期」を思い出さずにはいられない物語だが、その中でも『Dr.アシュラ』同様にパッと明るくしてくれるような存在であった。

 そして、2024年放送されたドラマ『離婚後夜』(ABCテレビ・テレビ朝日系)で地上波連ドラ初主演。カフェでアルバイトをしている大学生・伊織に扮した。カフェの常連客で既婚者の香帆(久保田紗友)に恋に落ちた彼は、夫との関係で傷ついた香帆に純粋な気持ちでぶつかり、大切に包み込む。落ち着いたトーンの口調で、優しさを最大限に感じられる作品だった。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる