ゾンビになるのか人間でいるのか 『哭戦 オペレーション・アンデッド』は戦争映画として秀作

『哭戦』は戦争映画として秀作

 ただ、この最悪の状態は、“ゾンビになる”というフィクションな設定だけではなく、現実世界でも現在進行中で起きています。戦争です。正義と命令がすり替わり、善悪の境界線があいまいになり、「敵を殺せ」という言葉が日常になる。本作は戦争にゾンビを重ねることで、フィクションとしての強度を上げていますが、彼らが体験している思いは現実の我々にもいつかやってくる可能性があるものなのです。

 彼らは“ゾンビ”ではなく、人間として最後を迎えるための行動を選びます。ある種、“お決まり”とも言える展開ではあるのですが、それでも彼らの気持ちが痛いほどわかり、そしてここで冒頭のおふざけシーンが活かされることもあり、思わず涙してしまうこと必至です。

 「“人が人でなくなっていく”という過程のなかで、どこまで人間でいられるのか」という問いは、現在を生きる私たち全員が一度は向き合うべきもののように思います。大スクリーンで観るとショックなシーンも多いですが、彼らの思いを受け止めるために映画館での鑑賞をオススメします。

■公開情報
『哭戦 オペレーション・アンデッド』
シネマート新宿ほかにて公開中
出演:チャーノン・サンティナトーンクン、アワット・ラタナピンター、スピチャー・サンカチンダー、大関正義
監督:コム・コンキアート・コムシリ
配給:アルバトロス・フィルム
2024年/タイ映画/タイ語、日本語/110分/シネスコ/5.1ch/英題:Operation Undead/字幕:藤井楓/R15+
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公式サイト:https://kokusen-movie.com
公式X(旧Twitter):https://x.com/albatrosasia
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@albatros_film

 

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