『Page30』で本格的に俳優業を開始 元ハイカラ MAAKIIIが明かす、“表現すること”の魅力

『Page30』は「劇薬」という言葉がピッタリな作品
――実際、撮影が始まって何がいちばん大変でしたか? やはり台詞ですか?
MAAKIII:観ていただいたらわかるように、もう半端ないぐらいの台詞の量で。とりあえず、劇中劇と言いますか、映画の中で彼女たちが演じる『under skin』という山田佳奈さんが書いてくれた戯曲があるんですけど、その台本を最初にもらって「まずは、これを全部覚えて」って堤監督に言われて。で、「誰がどの役をやるのか、まだ決まってないんですよね?」って聞いたら、「それはそのうち決まるから、とりあえず全部覚えてもらえますか?」っていう。
――映画のまんまじゃないですか(笑)。
MAAKIII:そうなんですよ(笑)。撮影自体は、ちょうど今から1年くらい前だったんですけど、その前に「こんな量の台詞をどうやって覚えたらいいんだろう?」って相当追い込まれながら……というか、どうやって覚えたのか、もう覚えてないぐらい集中して。それこそ、台本を首から下げて毎日生活していたんですけど(笑)。
――すごい(笑)。
MAAKIII:そればっかりは、自分ひとりでやらなきゃいけない作業じゃないですか。自分との戦いみたいな。現場で他の役者さんの足を引っ張るわけにはいかないので。だから、実際の現場も、それと同じように、すごく孤独な作業になるのかなって、ちょっと思っていたところがあったんですけど、いざお稽古が始まったら、お芝居っていうのは、やっぱりみんなで作り上げていくものなんですよね。良い意味でお互い刺激し合いながら、そこでまた新しいイメージが自分の中で湧いてきたりして。その作業をものすごく楽しめている自分がいたというか……それこそ、私が演じた樹利亜という人物は、沖縄出身のミュージシャンで、今回の舞台で、初めてお芝居に挑戦するっていう設定じゃないですか。そこは、堤監督の「仕掛け」だなって思って……。
――「仕掛け」というか、ちょっと意地悪な感じもしますけど(笑)。
MAAKIII:いやいや(笑)。実際、そこでノリノリになれた自分もいて……そう、撮影の前に衣装合わせに行ったら、私だけ衣装がジャージだったんですよ。で、「えっ、私だけジャージなの?」って思ったんですけど、そこにも監督の意図があって。樹利亜は、高校の体育の授業とかで着ていた母校のジャージを着て、稽古場に堂々と現れるんですけど、それって結構ヤバい人じゃないですか?
――まあ、そうですね(笑)。
MAAKIII:そういうところは、だいぶ抜けているキャラクターというか、ちょっとぶっ飛んだところがある人なんですよね。まわりからどう見られるとか、そういうことに対しては無頓着なキャラクターであるという。で、そこからイメージを膨らませていって、そういう人だったら、きっと普段からバリバリの沖縄のイントネーションで話すというか、そっちのほうが面白いんじゃないかなって、私のほうから監督に提案して。そしたら、監督も「そういうの大好き!」って言って採用してくれました。
――なるほど。「意地悪」とか言ってしまいましたけど、MAAKIIIさんがやりやすいような「配慮」だったのかもしれないですよね。
MAAKIII:そうかもしれないです。やっぱり、私以外の3人は、みなさん演技経験の豊富な方々じゃないですか。それが心強い反面、足を引っ張っちゃいけないっていうプレッシャーもやっぱりすごくあって。そういう中で、私が楽しんで演じることができるような設定や状況を、監督はもちろん、共演者のみなさんが作ってくださったんですよね。そこは、ものすごく感謝しています。
――映画の中では、相当ピリピリした緊張感が漂っていましたけど、実際の現場は、そんなことはなかったと。
MAAKIII:そうなんですよ。樹利亜は、唐田えりかさん演じる琴李に、いきなりやり込められたり、割とピリピリした緊張感のあるシーンが続く映画ではあるんですけど、実際の現場自体は本当にすごく温かくて。それこそ、ある取材でインタビュアーさんが「主演の女優さん4人が、本当に仲が悪そうで……」って言ったのを聞いて、私たち4人は「やったね。うまく騙せたね!」って喜び合ったりして(笑)。堤監督自身が、すごくユーモアに溢れた方というのもあって、本当に温かい雰囲気の現場だったと思います。
――なるほど。そうじゃないと、あのピリピリした雰囲気は逆に出せないのかもしれないですよね。
MAAKIII:そうかもしれないです。それこそ、撮影が始まる前は「やっぱり現場で怒られたりするのかな?」「罵声が飛び交ったりするのかな?」とか、勝手にいろいろ想像していたというか、それでもいいと覚悟を決めて挑んだところがあったんですけど、めちゃめちゃアットホームな現場でした(笑)。もちろん、劇中劇も含めて、すごく集中力のいる台本というか、私が演じた樹利亜は、とにかく追い詰められる役ではあるんですけど、だからこそ劇中劇で彼女が演じる役どころに、そういうままならない思いをぶつけるようなところもあって。すごく面白い経験をさせていただいたと思います。ただ、先日の舞台挨拶で、堤監督が「この人たちは、無理難題を与えれば与えるほど燃えるんですよ」っておっしゃっていて……。
――(笑)。
MAAKIII:「そんなことないです!」って、みんなで怒ったんですけど(笑)、私に関して言うと、もしかしたらそういうところがあるのかなって、あとからちょっと思ったんですよね。そのあたりは、最初から監督はお見通しというか、堤監督の『トリック』(テレビ朝日系)で、仲間由紀恵さんが言う決め台詞があるじゃないですか。「全部まるっとお見通しだぜ!」っていう(笑)。実は、そういう感じだったのかなって、あとになってからちょっと思いました。
――なるほど。自分に近いけれど、自分ではない人物を演じるという経験は、MAAKIIIさんにとってもすごく新鮮だったんじゃないですか。演じることによって、自分自身を客観視できるようなところがあったり……。
MAAKIII:それはすごくあったと思います。自分と近いような人物でも、自分だったら絶対言わないような言葉を言ったりするわけじゃないですか。それによって、自分の中に眠っていた感情が出てきたり。あと、自分ではない誰かを演じているからこそ、恥ずかしさみたいなものを全然感じないようなところがあって。だからホント、恥も外聞もなく、自分のはらわたまで見せてしまう感覚というか、すべてをさらけ出しているような感覚があって。そこがやっぱり、表現することの魅力なのかなって、改めて感じたんですよね。これはもう、やめられないなっていう(笑)。
――ちなみに、完成した映画をご覧になって、ご自身ではどんな感想を持ちましたか?
MAAKIII:すごかったです、胸やけが(笑)。やっぱり、だいぶカロリーの高い映画じゃないですか。撮影から1年経って、自分の中ではすっかり抜けたつもりになっていたんですけど、改めて作品を観ると、すぐにあの空間に呼び戻されるというか……。ホント、高カロリーで高タンパクな作品と言いますか、すごい消化に時間が掛かるような映画なので、私はまさに「劇薬」という言葉がピッタリな作品だなって思っていて。実際に「劇」の話でもあるし、私が演じた樹利亜が、あのメンバーの中の「劇薬」でもあるっていう。ただ、やっぱり最後は、ひとりじゃないことに気づかされるというか、そういう温かい作品になっているなって思いました。
――終始ヒリヒリとした緊張感が漂う作品ではありますけど、決して抜けの悪い終わり方にはなっていないという。
MAAKIII:そうなんですよね。途中までは、最悪の結果になりそうな感じがありつつも(笑)、最終的には、すごく温かい余韻が残る感じの作品になっていると思うので、みなさん是非、ご覧になっていただけたらなって思います。
■公開情報
『Page30』
渋谷 ドリカム シアターほかにて公開中
主演:唐田えりか、林田麻里、広山詞葉、MAAKIII
原案、監督:堤幸彦
音楽:上原ひろみ、中村正人
エグゼクティブプロデューサー:中村正人
脚本:井上テテ、堤幸彦
劇中劇『under skin』脚本:山田佳奈
製作・配給:DCT entertainment, Inc.
© DCTentertainment
公式サイト:https://page30-film.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/page30_movie
公式Instagram:https://www.instagram.com/page30_movie/

























