河合優実、朝ドラ初出演『あんぱん』でさらなる飛躍 大躍進を遂げた2024年までを振り返る

『あんぱん』“朝ドラ”初出演の河合優実に期待

 そして忘れてはいけないのが、映画『あんのこと』と『ナミビアの砂漠』。『あんのこと』は、母親から売春を強要されているヤク中の女性・杏、『ナミビアの砂漠』では、人に寄りかかって生き、次第に生きづらさを感じていく女性・カナを演じた。どちらもセリフで感情を語ることが少ない作劇の映画だが、河合の視線やふとした瞬間の表情の緩みから、登場人物たちの喜びや痛みがありありと伝わってくる。河合を見ていると、人間の複雑で痛々しい感情は文字や絵ではなく、人間にしか表現できないのかと思わされる。

河合優実主演『ナミビアの砂漠』の強烈なオリジナリティ 山中瑶子監督による“決意の一石”

『バービー』(2023年)、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年)、『82年生まれ、キム・ジヨン』(2020年)など、…

 河合は、どんな作品であっても登場人物の感情を観ている側に想像の余地を残すくらいの絶妙な強度で、繊細に伝えてくれる。その方法は、視線や表情、筋肉の緩み、身のこなしなど、作品によって異なるが、彼女が放つ表現をきちんと受け止めなければと目が離せなくなるのはどの作品でも同じだ。そして、恐ろしいのは、2024年あれだけの活躍を見せていても、彼女の到達点はここではないと信じさせてくれるところだ。まだ上がある。彼女が俳優業を突き詰めていった先に何があるのかと、貪欲に期待を寄せてしまうのだ。

 正直、映画のように言葉を使いすぎない表現が得意な河合の芝居が、説明が多くなりがちな朝ドラの作劇にどれくらい馴染むか未知数な部分は多い。一方で、河合がキャスティングされている以上、魅力を生かす演出が期待できることも事実。その証拠に、第12話でパン食い競争に出場する豪(細田佳央太)に言葉をかけたときのニュアンスや表情からは、蘭子から豪への淡い恋心が感じられた。今後も、蘭子の感情の機微を味わえる芝居を見せてくれるだろう。

 映画や民放ドラマにどれだけ出演していようと、朝ドラはやはり別格だ。ここでの知名度アップは、河合を一つ上の階層へと押し上げてくれるはず。もっとたくさんの人が、彼女の芝居に驚嘆する日を夢見て、彼女の朝ドラ初出演を見届けたい。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、志田彩良、二宮和也、瀧内公美、山寺宏一、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、阿部サダヲ、妻夫木聡、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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