『子宮恋愛』は“炎上”を乗り越えられるか? パワーワードが頻出する不倫ドラマの現在地

読売テレビ「ドラマDiVE」枠にて4月10日より放送がスタートする松井愛莉主演ドラマ『子宮恋愛』が、「私の子宮が恋をした。」というキャッチコピーで放送前から物議を醸している。女性の身体感覚をここまで直接的に描く言葉は、テレビドラマの世界では珍しい。「表現の自由が行使されて素晴らしい!」「めっちゃ気になってる。楽しみ。」といった期待の声もある一方で、「不貞行為をカジュアルに描くのはやめた方がいい」「ガチで?地上波で?」といった否定的な意見や、性的な表現に対する嫌悪感を示すコメントも少なくなかった。SNS上では称賛と嫌悪が交錯し、その過激さゆえに炎上すら宣伝戦略として機能しているようにすら見える。
近年の日本の不倫ドラマでは、こうしたパワーワードと呼ばれるキャッチーで衝撃的なフレーズが主流になりつつある。2023年の『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)では「私の心は3年前に死にました。」、2017年の『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)では「愛してたんだもおおおおん!」など、記憶に残る強い言葉が話題を集めた。もはやドラマは内容だけでなく、その周縁にある言葉の力でも勝負する時代に突入している。
『子宮恋愛』では、夫との関係が冷え切った主人公まきが、同僚の男性に惹かれていく過程を描いている。特筆すべきは、原作漫画には存在しない「子宮が恋をした」という一文を、あえてドラマの宣伝に据えた点だ。制作者はこの言葉によって、主人公が抱える理性では制御できない感情の奔流を強調したかったのだろう。情報の洪水の中で、コンテンツが「見つけられる」ためには、瞬間的に視線を奪う言葉が必要だ。これはドラマ業界に限らず、現代社会のあらゆるマーケティングにも通じる普遍的な論理である。

2024年のドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)もまた、倫理的に挑戦的な内容で視聴者の反応を二分した。托卵(=他人の子を夫の子として育てさせる)という題材は、決して穏やかではない。しかしその是非を問いかけることが、このドラマの主眼ではなかった。モラハラ夫に対して抱える絶望と、想いを寄せていた相手との再会が生んだ希望。複雑な感情の交錯が、視聴者の共感と嫌悪の両方を引き出した。『子宮恋愛』が“生理的衝動”を、『わたしの宝物』が“倫理の限界”を描いたように、不倫ドラマは今、表現としての限界にも挑戦していると言えるだろう。そこには単なるスキャンダルではなく、人間関係の本質をえぐり出そうとする野心すら垣間見える。
視聴者の目を引くには、センセーショナルなフレーズが欠かせない。たとえば『ギルティ~この恋は罪ですか?~』(読売テレビ・日本テレビ系)の「登場人物、全員裏切り者。」や、『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)の「昼、あなたを受け入れた舌が、夜、夫に嘘をつく。」など、短い言葉で世界観を射抜くような表現が多い。これらはドラマの深層に潜む苦しみや欲望、そして道徳的な葛藤を一言に凝縮したものであり、「不倫」という複雑なテーマを簡潔に伝える力がある。






















