宮沢氷魚が感謝する“出会い”のタイミング 「今は“一番いいものを作りたい”」
NHKドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』に出演した宮沢氷魚は、時間に追われる日々のなかで、自身と役柄が重なり、「ゆっくりと時が流れる物語に癒された」と明かす。本作は、「一生付き合わなくてはならない」病気にかかったことから生活が一変した主人公・麦巻さとこ（桜井ユキ）が、隣に住む大家の美山鈴（加賀まりこ）と、訳あり“料理番”の司（宮沢氷魚）を通じて、食事で体調を整える「薬膳」と出会い、少しずつ人生を変化させていく。司を演じるにあたっての役作りの裏側や、共演者とのアットホームな現場でのエピソード、そして俳優という仕事への熱い想いまで、宮沢にじっくりと話を聞いた。忙しい日々に追われるすべての人に、そっと寄り添い、温かい気持ちにさせてくれる言葉が詰まっていた。（編集部）【インタビューの最後にはサイン入りチェキプレゼント企画あり】
「これはチャンスだ！」と思ったものをこれからもしっかりと
――今回、作品のどんなところに魅力を感じてオファーを受けられたのでしょうか？
宮沢氷魚（以下、宮沢）：このドラマは特に大きな出来事が起こるわけではなく、時の流れがゆっくり進んでいく物語なんですよね。ドラマや映画って、基本的には何か大きな転機があって展開していくものが多いですけど、この作品は日常にある出来事が見事に描かれていて、僕はそこにすごく癒しを感じました。実は原作を読んだときに有り難いことに仕事がかなり忙しくて、ずっと時間に追われていて……。心も体もケアがおろそかになっていたので、まず主人公・さとこの気持ちに共感できたんです。誰にも理解してもらえない悩みを抱えていて、それを乗り越えたいという思いはあるけど、なかなかうまくいかずに精神状態が乱れていく。そんな中、主人公・さとこは司に出会って薬膳を知ることが救いになりますが、僕にとってはこの作品がある種、救いの手になったというか。「ちゃんと時間を取って、自分のことを大事にしないといけないな」と、自分をいたわる大切さに気づくことができました。正直、今でも「それができています」とは言えませんけど、意識するようになっただけでも大きいと思うんです。
――たしかに、気づかなければ始まりませんからね。
宮沢：そうなんですよね。しかも、その入口にはなかなかたどり着けないものだと思っていて。でも、僕はこの作品を通してそこに気づくことができたので、自分の生活習慣や食生活も一つ一つ見直していけたらいいなと。すぐに全部はできないけれど、ちょっとずつ改善していきたいなと思えるきっかけをもらえました。
――今までを振り返ってみても、ご自身の状況と作品のオファーをもらうタイミングに、縁を感じることが多いですか？
宮沢：本当にタイミングに恵まれていると思います。そのときの自分が必要としている作品であったり、人との出会いであったり、これまでにも素敵な巡り合わせがたくさんありました。タイミングは自分でコントロールできるものではないので運命的なものも感じますし、だからこそ、そういう機会を大事にしたいなとも思います。日々、生きているとタイミングを逃してしまうことのほうが多いかもしれませんが、「これはチャンスだ！」と思ったものをこれからもしっかりと掴んでいきたいです。
――司を演じるにあたって、どんな役作りをされましたか？
宮沢：司は風貌も含め、なんとなく自分に似ている気がしていて。僕が司に対して抱いた印象と、周りの人が僕に抱いてくださる印象に近いものがあるんです。基本的に笑顔が多くて、柔らかい空気感をまとっていて、そばにいるだけでデトックス効果があるというか……自分で言うのは恥ずかしいですね（笑）。でも、本当によくそう言っていただけるので、そんな自分を司に反映したいなと思いました。あとは、薬膳について調べてみたり、もともと料理はしていたんですが、これまで適当だったものもきちんとやってみようと思ったり。そういったところから、少しずつ司の人物像を作り上げていきました。
――演じてみて、手応えはいかがですか？
宮沢：撮影に入って2週間ほど経って、日に日に司のキャラクターが自分の中で明確になってきています。最初はミステリアスな雰囲気で登場して、第1話の後半には優しい司の姿が見えてくる。さらにこの先、回想シーンや転機になるシーンで“みんなの知らない司”が出てくるので、「そこをどう表現しようかな」というのが今の課題であり、楽しみにしている部分です。
――撮影現場でのエピソードも聞かせてください。
宮沢：桜井さん、加賀さんと3人のシーンでは、食事をしていることが多いんです。先日もすき焼きを食べながらお芝居する場面があって、スタッフさんの準備時間には「この肉いくらすると思う？」と話したり、加賀さんから「『べらぼう』この先どうなるの？」と聞かれて「言っていいんですか？」と返したりして（笑）。作品によっては、待ち時間があるとみなさん楽屋に戻ったり、前室にいたりしますけど、今回は団地のセットにみんなで残って喋っていますね。
――コミュニケーションを自然に取られているんですね。
宮沢：朝、会った瞬間に加賀さんは「司くん、おはよう。元気？」とフランクに話しかけてくれますし、桜井さんもすごく話しやすい方なので、特別何かで盛り上がるということではなくて、気がついたらみんなで普通の会話をしています。なので、物語の空気感とそんなに変わらないかもしれないですね。何かを食べながら話しているついでにカメラが回っているような（笑）、アットホームな現場だと思います。
