Licaxxxが分析「ファレルの人生をレゴ®アニメで表現できた理由」 音楽好き注目ポイントも

Licaxxxがファレルの自伝レゴ®映画を分析

リアルタイム世代でも驚くようなエピソードも

ーー冒頭でも触れましたが、ドキュメンタリーをレゴ アニメーションで作るということを最初に聞いたときどう思いましたか?

Licaxxx:びっくりしました。でも、本編が始まった瞬間にカメラワークがめちゃめちゃドキュメンタリーで笑っちゃって。しっかりボケてるし、しっかりブレてて、そういう手法でやるんだと思ったのも面白かったです。話をレゴで作り込むんじゃなくて、ドキュメンタリーをレゴで作ってるんだっていうのを、ちゃんと頭で鑑賞者に示すというのが良かったですね。

ーー一方で、ファレルが音を生み出すシーンなどは、いきなり抽象的な世界に入ります。こういうシーンが画期的だなと思ったのですが、Licaxxxさんはどう感じましたか?

Licaxxx:実は私、「音が色で見える」というファレルの共感覚はなんとなくわかるんです。例えばファンクやソウルとかを聴くとオレンジ系な感じがするし、冷たい音は暗く感じる。Macの中でトラックをジャンルやフォルダで分けるとき、自分の感じる色のラベルを使ってますね。

ーーファレル自身は幼少期に近しい感覚を持つチャド・ヒューゴと出会ってザ・ネプチューンズを結成しましたが、Licaxxxさんは人と感覚を共有するような出来事はありましたか?

Licaxxx:それがあったらDJやってないんだよな(笑)。でもバンドとか組んでたし、音楽好きで集まるみたいな経験はしてました。ただ長く一緒にできる相方みたいな存在は、音楽では見つけられてない。タイミングで仲間を集めて動くこともあるけど、でも今に至るまで同じ人と音楽をやれているのはちょっと羨ましいし、すごいなと思います。

ーーしかもファレルは若者の頃に出会った大物とかとも、いい意味で交流が続いていますね。

Licaxxx:ミッシー・エリオットも学生時代からの友人だったというのは本作を観るまで知らなくて、結構くらいましたね。「すごいな! 地元熱くない?」って(笑)。

ーーその関係性を本編中で触れているところに、ファレルも客観的に面白さも感じてたのかもしれないですね。そして仲間に恵まれているのは、彼自身が仲間を大切にするからなんだろうと思います。

Licaxxx:スヌープ・ドッグとのコラボとか、タイミングも計算していそうだけど、根本が“いいやつ”な感じがする。あと、ミッシーのほかにも、マクドナルドのサウンドロゴ(i'm lovin' it)を手掛けているのは知らなかったです。作中でお父さんも驚いてたけど。

ーーこれらの話も含め、本作にはリアルタイムで追ってた人もこぼしてるエピソードも結構あるかもしれないですね。

Licaxxx:めっちゃあると思います。

サウンドトラックがファレルのベストアルバムでもありヒストリー

ーー実は、映画公開に先駆けて3月に日本国内盤サウンドトラックがリリースされています。ベストアルバムのようでもあり、ヒストリーでもある。同時に、自伝的作品として本作があって、サントラの音楽を聴きながらこれを参照できるっていう仕組みになってると思うんですが、これは今までにないですよね。

Licaxxx:そうかもしれない。プロデュース作品を一気に聴けるっていうのは意外とないかも。それに新曲も5曲収録されていますよね。ライブのシーンで流れる「VIRGINIA Boy(Remix)」が格好良かったです。

ーーレゴ アニメーションで表現されたライブシーンも見ごたえがあって面白いですよね。

Licaxxx:そうそう、全部かわいいんですよ。あと作中でその時代のものではない曲をBGMとして使っている箇所もあるけど、その合わせ方がまた上手いなぁと思いました。使い方もくどくないというか、「全部を聴かせてやろう」っていう感じじゃないのがすごくいいです。これって本当に多岐に渡る作品を作ってらっしゃるからこそできるものかなとも思います。

ーーパンフレットのプロダクションノートの中には、ファレルはモーガン・ネヴィル監督に対して「ネヴィルをプロデューサーのメガミックスを無理やり聴かせるドキュメンタリー監督にしたくなかった」とあります。きっといいコミュニケーションがあったんでしょうね。

Licaxxx:ありましたね。で、その後も「忙しいのに曲をいっぱい作った」みたいなことも回想されていて(笑)。完全に“作る側”の人間の動きです。デザイナーじゃなくてやっぱりクリエイターなんだって思いますね。

ーー最後になりますが、Licaxxxさんはどんな方に本作をおすすめしたいでしょうか?

Licaxxx:「もうファレルなんて知ってるよ」みたいな人が観ても面白いと思いますが……むしろアーティストのドキュメンタリーが苦手な人にも観てもらいたいですね。私自身、実はドキュメンタリーって得意じゃないんです。ただその人を追ってるだけのような感じなら、「ライブ観ればいいじゃん」って思ってしまうことがあって。

ーー僕もアーティストにインタビューをするにあたって、「音楽聴けばいいじゃん」とか、「ライブ観ればいいじゃん」って、音楽のインタビュアーとしてジレンマを感じることがあるんですが、レゴ アニメーションを取り入れたこの映画はそれをかなりの部分で解決してると思うんです。

Licaxxx:本当にそうですね。ファレルの人生を映画化するにあたって、“演技”を伴う映画にするのは違うけど、ドキュメンタリーにすると少しインパクトが足りない……、そういう塩梅だったのかもしれませんが、これを「レゴならやりたい」って言ったファレルはすごいなって思いました。なんならこれ、小学校の音楽の授業とかに採用したら良いと思います。日本だと仕組み上、トラックメイカーは裏方になりがちじゃないですか。あんまり表に立って賞を取るような人は見かけないですよね。そんなところにスポットライトが当たったこの作品を、音楽ファンの子どもにも観てもらいたい。見た目も可愛いし、すごく楽しい感じでビートが鳴るからきっと爆ノリで観れる。あと、音楽好きな大人はレイトショーでラフに飲みながら観るのも楽しいんじゃないかな。本当にどんな世代の人も、色々なシチュエーションで楽しめる音楽映画だと思うので、音楽が好きな人はぜひ観に行ってみてください。

■公開情報
『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
出演:ファレル・ウィリアムス、スヌープ・ドッグ、ケンドリック・ラマー、ティンバランド、ジャスティン・ティンバーレイク、バスタ・ライムス、ジェイ・Z、プシャ T、N.O.R.E.、ダフト・パンク、グウェン・ステファニーほか
監督・脚本・編集:モーガン・ネヴィル
配給:パルコ、ユニバーサル映画
©2024 FOCUS FEATURES LLC
公式サイト:https://pharrell-piecebypiece.jp
公式X(旧Twitter):@Pharrell_Movie

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