『べらぼう』が描く江戸は現在の日本と重なるところばかり 蔦重と一緒に考える“未来”

『べらぼう』蔦重と一緒に考える“未来”

 「それが申し訳ねぇってんなら、お詫びにお前さんが世の人をツキまくらせりゃいいんじゃねぇの? 本ってのは、人を笑わせたり泣かせたりできるじゃねぇか。そんな本に出会えたら人は思うさ、『ああ、今日はツイてた』って。本屋ってのは、ずいぶんと人にツキを与えられる商いだと俺は思うけどね」と。

 成功に向けて自分の背中を押しているように感じる風。しかし、それは自分にだけ吹いているのではなく、その先にある未来に向かって吹いているのではないかと思った。蔦重でいえば耕書堂の成功の先に夢見る、吉原で働かざるをえない遊女たちが少しでも幸せを感じられる未来。そして吉原や市中の隔たりなく、面白い本が広まる世の中。もしかしたら、その風が自分のために吹いていて、すべてが思い通りになるのだと勘違いした途端に、すぐさまそのツキに見放されてしまうのかもしれない。

 金を積んで瀬川を見受けしながら、「心は売らないということか」と憤った鳥山もまた、そんな勘違いをしてしまったひとりだったのだろう。瀬川と幸せになる、そんな未来に向かって風は吹いていたはずだったのに……。金があったら叶うのにと悔しい思いをすることよりも、いくらでも金があるのに叶わないものがあると突きつけられるほうが、人はよっぽど絶望してしまうものなのかもしれない。

 逆風が吹いたり、かと思えば急に追い風が吹いたり。人生は思い通りにいかない大きな流れに翻弄されるばかりだ。だが、そんなときほど「物事を引いて見る」ことが肝心なのだろう。この風は、どんな未来に向かって吹いているのだろうか。そして、自分はその未来に向けて何ができるのだろうか、と。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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