池松壮亮×石井裕也『シミュレーション ~昭和16年夏の敗戦~』NHK総合で8月放送決定

池松壮亮が主演を務めるNHKスペシャル終戦80年ドラマ『シミュレーション ~昭和16年夏の敗戦~』が、8月に前後編でNHK総合で放送されることが発表された。
本作は、数多くの戦争関連番組を世に送り出してきたNスペが終戦80年の夏に送る渾身の実録ドラマ。舞台は真珠湾攻撃の8カ月前となる1941年(昭和16年)4月。国の指示の下、日本中のエリートたちが秘密裏に集められた。対米戦をあらゆる角度からシミュレートするためにつくられた「総力戦研究所」のメンバーたちだ。若手官僚、報道人、軍人……次世代の日本を担うまさに“ベスト&ブライテスト”たち。模擬内閣を作り、軍事、外交、経済など、さまざまなデータや情勢を分析。アメリカと戦った場合のありとあらゆる可能性を探っていく。そして最終的にエリートたちが導き出した結末は、“圧倒的な敗北”という、あまりにも厳しい結論だった。彼らはどのようにして、対米戦必敗の結論へと至ったのか。そしてなぜ、未来を的確に予見していた彼らの結論が顧みられることなく、国家や軍は、勝ち目のない戦争に突き進んでいったのか。
日本敗戦までのプロセスは、原爆投下以外ほぼ全て、総力戦研究所の若手エリートたちが開戦前にシミュレートしていた。それから80年。今なお世界から銃砲の音が鳴り止む日はない。戦争の時代に、理性を超えて人びとを突き動かしていく“危うい空気”の正体とは何なのか。それが本作のテーマとなる。
猪瀬直樹のノンフィクション『昭和16年夏の敗戦』を原案に、石井裕也が監督を務め、初めて戦争ドラマに挑む。
池松は産業組合中央金庫(現・農林中金)の調査課長・宇治田洋一を演じる。宇治田は東大法学部を首席で卒業したエリート。経済全般に明るいだけではなく、地方の農家など、中央からは見えにくい厳しい現実を肌で知っている。ある日突然「総力戦研究所」へ招集される。模擬内閣を作り、軍事・外交・経済などあらゆる角度から開戦予測を立てよと言われ、その議論をまとめる“内閣総理大臣役”を命ぜられることに。そこには満州で亡くなった洋一の父の“過去”が絡んでいた。洋一たちが、陸軍大臣・東條英機らから求められたのはアメリカに“勝つためのシミュレーション”。しかし、日本を取り巻くデータや情勢が突きつけるのはどれも日本にとって不利な結果ばかりだった。軍部への複雑な感情から当初消極的だった洋一だが、シミュレーションが厳しい現実を示し始めると、「国を破滅に導く対米戦に踏み切るべきではない」という思いに駆られていく。
コメント
池松壮亮(宇治田洋一役)
なぜこれほどまでに平和は遠いのか。
平和だけでなく、
なぜこれほどまでに良き未来への道のりは険しいのか。
2025年に今作を撮影する日々の中で、この問いが頭から離れません。
この国に生まれ、戦後80年という年に俳優として今作に出逢えたことは、大きな大きな使命と責任をもたらしてくれるものでした。
言論や精神や命までも戦争のために国家の統制下に置かれた時代に、研究員の彼らは感情論ではなく、精神論ではなく、事実に辿り着き、事実に畏怖し、結論を出しました。この世界に無数にある黙殺の歴史の物語となっています。
世界歴史史上唯一の被爆国の戦後に生まれたことの責任が、私自身にもきっとあるはずだと信じて、石井監督のもと、素晴らしいスタッフ、キャストと共に、毎日祈るように撮影しています。
どうかよろしくお願いいたします。
石井裕也(脚本・演出)

これまで作られてきた日本の戦争ドラマ・映画は、終戦間際に一般市民が不幸な目に遭う、いわゆる戦争被害者の視点に立つものが多かったと思います。私が知る限り、その大元となった「なぜこの国は無謀な日米開戦に踏み切ったか」にフォーカスしたものはほとんどありません。あまりにも事態が複雑でドラマ化が困難だったのも一因でしょうが、ここまで手出しできなかった理由は、正直に言ってしまえばほとんどタブーに近かったからだと思います。
開戦前夜の人間たちの様々な葛藤は、今の私たちにとって決して無関係ではありません。当時の日本社会に漂っていた不気味な「空気」は、確実に引き継がれて今の社会にも存在するからです。日本を代表するキャスト、スタッフと共に今この作品が作れたことの大きな意義を感じています。
■放送情報
NHKスペシャル『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』
NHK総合にて、8月放送(前・後編を予定)
原案:猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』(中央公論新社刊)
出演:池松壮亮ほか
脚本・演出:石井裕也
制作統括:新延明(NHK)、家冨未央(NHKエンタープライズ)、布川均(ポニーキャニオン)、橋本櫻(東京テアトル)、永井拓郎(RIKIプロジェクト)
制作:NHK、NHKエンタープライズ、RIKIプロジェクト
写真提供=NHK