『おむすび』あきらめない田畑志真にヒロインの輝きを見た 米田家の呪いの乗り越え方も

『おむすび』(NHK総合)第109話では、美佐江(キムラ緑子)の元気がなかった理由が判明する。
菜摘(田畑志真)と結(橋本環奈)は、高齢者向けのコンビニ弁当を完成させるため試行錯誤を重ねる。しかし、菜摘の上司の豊岡(隈本晃俊)はOKを出さない。ダメ出しの連続で心が折れそうになる菜摘を、結は励ましながら弁当づくりを手伝う。
第22週の週タイトルは「理想と現実って何なん?」。食が細くなった美佐江を心配したことが、菜摘が弁当の商品開発に取り組むきっかけだった。第107話で、管理栄養士の土屋(森優作)から「どれだけ立派な理想があっても、実現できへんのやったら意味ないんや」と言われ、菜摘は反省し、そこから本気になって改良を重ねる。

栄養のことが原因で病院に来る患者さんがいなくなるようにと考える結と、高齢者に健康でいてほしいと願う菜摘は、率直に言って立派だと思う。高い志に拍手を送りたいところだが、現実の壁が立ちはだかった。作業工程や原材料の調達、商品の見ばえをクリアできず、病院との共同開発はいったん中止になる。
ラストチャンスの試食会で、塚本(濱田マリ)と土屋のお墨付きは得られた。ラスボスはやはり豊岡。「これだけやったら、この弁当を上に上げることはでけへん」と、最初からそう言うつもりだったとしか思えない一言を投げつける。そこに菜摘がとっておきのプランを披露する。
一つひとつ課題をクリアしていく過程に、知らないうちに身を乗り出して没頭している自分がいる。森下(馬場徹)や蒲田(中村アン)ら医師も、出会った当初は厳しい態度を取っていたのが、理解者に変わり貴重なアドバイスを授ける。困難にめげず、あきらめない菜摘に、典型的な朝ドラヒロインを見たのは筆者だけではないはず。

菜摘のプランはおそらく、高齢者のフレイル改善だろう。フレイルは加齢により心身の機能が衰えた状態で、結が作った大豆の煮ものがヒントになったのではないか。栄養バランスを考えた弁当はコンビニでも定着しているが、菜摘たちの取り組みも付加価値をどう上乗せするかの挑戦と言い換えられる。




















