“柔道の専門家”も映画『TATAMI』を称賛 「作劇と競技に対するリスペクトが見事に両立」

森直人×古田英毅、映画『TATAMI』を絶賛

スポーツと政治の関係について、ファンができることは?

(左から)古田英毅、森直人

 『TATAMI』はスポーツと政治の関係性について焦点が当てられた作品だ。森はその点について「イスラエルボイコット問題やウクライナ侵攻に関連するロシア選手の問題など、国と個人が交錯する中で、国家レベルの政治的衝突がスポーツマンシップの純粋さを損ねる現実があります。一方でファンとしては、我々が何かできることはないのでしょうか?」と尋ねると、古田は「ファンこそが国と個人を切り離し、冷静に批判や応援を行うことが必要だと考えます」と回答。

 続けて「抑圧と戦う選手にはシンパシーが湧きやすいです。たとえば、今回のイランの選手のように被害者として明確な場合、感情移入しやすい。しかし、単に戦っているロシア選手の試合を見た際に、我々のような“西側”から批判されることも多いですし、同じだけの同情を持つのは難しい。たとえ批判をするにしても、そうしたことを理解しているかどうかが大事なのではないでしょうか」と考えを述べた。

イラン出身監督とイスラエル出身監督の合作であることの意義

 本作は、イスラエル出身のガイ・ナッティヴと、自身もコーチ役として出演したイラン出身のザーラ・アミールが共同で監督を務めて制作され、映画史上初の座組で制作された。そのことについて森は「平和への祈りが込められている」と評価。古田も「2人が勇気を持って立ち上がったことに対して、素直に敬意を表したいと思います」と賞賛した。

 そして、「スポーツや文化は、たとえ様々な抑圧があったとしても、政治よりもはるかに自由な世界です。今回の作品を通して、私自身、抵抗の手段として文化の力が非常に大きいと再認識しました。映画は映像として後世に残り、単なる表現以上に、巨大な政治力に抗するための文化的対抗軸が存在することを示していると感じます。そして、柔道という競技がその表現のために選ばれたことには必然性があると思います」と、『TATAMI』が制作されたことの意義を改めて強調し、トークイベントは終了した。

■公開情報
『TATAMI』
2月28日(金)新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン
監督:ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール
脚本:ガイ・ナッティヴ、エルハム・エルファニ
配給:ミモザフィルムズ
2023年/アメリカ、ジョージア/英語、ペルシア語/103分/モノクロ/1.78:1/5.1ch/原題:TATAMI/字幕:間渕康子
©2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved
公式サイト:https://mimosafilms.com/tatami/

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