『時すでにおスシ!?』が突いた親心の盲点 中沢元紀の“絶妙な息子感”がクセになる

子どもの頃は生魚が苦手で、回転寿司で玉子や軍艦ネタばかり食べていた。それが今や、生魚の中でも一生美味しいと思える気がしなかったウニやイカを好んで食べている。「いつから?」と聞かれても、明確には答えられない。でも、大人になるって、そういうことではないだろうか。
『時すでにおスシ!?』(TBS系)第6話では、みなと(永作博美)の息子・渚(中沢元紀)の独り立ちに向けた第一歩が描かれた。

ひょんなことから静岡にある森(山時聡真)の実家を訪れたみなとと大江戸(松山ケンイチ)。そのことを知ったクラスメイトたちは、2人の恋の予感に胸を弾ませる。焦って否定するみなとだが、セザール(Jua)と立石(佐野史郎)からは「恋に年齢は関係ない」と諭された。
みなとも大江戸を全く意識していないわけではなく、その言動にドキッとさせられた瞬間もある。だが、今はまだ離れて暮らす渚のことで頭がいっぱいであり、それどころではないというのが本音なのではないだろうか。
そんな中、新幹線の運転士研修中だった渚が体調を崩し、病院に運ばれたと連絡が入る。原因はストレスとのことで、退院してしばらく実家で休養することに。だが、甲斐甲斐しく世話を焼くみなとを拒絶し、塞ぎ込む渚。しまいには無断で寮に戻ろうとし、いろんな気持ちを呑み込んで、いつものように背中をポンと押そうとしたみなとの手を振り払う。

「ずっと嫌だった、その手が。頑張れ、頑張れって呪いかけられてるみたいで」
鮨アカデミーを辞めようとしていたとき、「何千、何万回と、相手を心から思って料理を作ってきた手に見えました」と大江戸に褒められた“手”。その手で、みなとは渚に「愛情」を伝えてきたが、それは受け取り次第で「プレッシャー」にも変わってしまう。
みなとは、いわゆる世間で言われる“毒親”とは大きく異なる。渚にたった一人で子育てしてきた苦労をアピールする素ぶりも、自分の価値観を押し付けるような言動も一切ない。新幹線の運転士もずっと渚の夢だったから応援しているだけで、本人が心から辞めたいと言ったら、みなとなら受け入れるはずだ。
だけど、子どもは親の何気ない言動や雰囲気から自分に向けられた期待を感じ取ってしまうもの。夫・航(後藤淳平)を亡くしてから、みなとの愛情の矛先は良くも悪くも渚だけになってしまった。みなとの場合は夫に対して最後に優しくできなかったという罪悪感もあるため、その分、渚に尽くしてきたのだろう。それが、無言の圧となって渚にのしかかっていたのだ。鮨アカデミーに入学し、いくらか気持ちは分散されたが、今も子離れできていない部分もある。

一方で、渚の方も独立はしたものの、親離れできているようには思えない。みなとの期待に押し潰されそうになっているのは決して嘘ではないが、うまくいかないことを親のせいにしている“甘え”も彼の中に存在しているように見える。そもそも子離れ・親離れと言うが、ほとんどの親子は完全に離れることはできないのだ。大事なのは、蘭子(猫背椿)が言うように、お互いが息苦しくならない“余白”を作ること。そして、そのために必要なのは第三者の存在だ。
渚の言葉にショックを受けるみなとが、胡桃(ファーストサマーウイカ)の「息子さんが待山さんのことを呪いとまで言い切れたのは、自分の軸ができはじめてるからじゃないですか」という自身の経験談に基づく言葉に救われたように。渚が大江戸に誘われ、参加した鮨アカデミーの体験授業で出会った森の「あんな人がお母さんって羨ましい」という言葉で自分が恵まれていることを実感したように。みなとが鮨アカデミーに入ったことで、今まで渚と2人だけだった世界にもたくさんの人が加わった。その存在はきっと、親子の間に心地よい“余白”を作ってくれるのではないだろうか。

それにしても中沢元紀の“圧倒的な息子感”はなんだろう。真面目でしっかり者だけど、頼りなさと憎めなさが絶妙で、いくつになってもみなとが心配するのも理解できる。何より、みんなのおかげで仲直りできた2人だが、渚自身の問題はまだ解決していない。「自分の好きを突き詰めてる時って、失敗も楽しいんですよね」という大江戸の言葉を受け、渚は何を思ったのだろうか。渚が今の迷いを断ち切るまでは、みなとも安心して大江戸との恋には進めなさそうだ。もどかしいけれど、こうしてゆっくりと信頼を積み重ねていく安心感こそが、立石の言う大人のロマンスの醍醐味なのかもしれない。
■放送情報
火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:永作博美、松山ケンイチ、ファーストサマーウイカ、中沢元紀、山時聡真、杏花、平井まさあき(男性ブランコ)、後藤淳平(ジャルジャル)、猫背椿、関根勤、有働由美子、佐野史郎
監督:坪井敏雄、岡本伸吾、金子文紀
脚本:兵藤るり
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:益田千愛、鈴木早苗
主題歌:Creepy Nuts「Fright」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:青木沙也果
製作著作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tokisushi_tbs/
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