『ホットスポット』の笑いを生む“ディテール”へのこだわりとは? バカリズムの“嘘”の巧さ

『ホットスポット』のディテールへのこだわり

 備品をいつも持ち帰ってしまう客がいる流れで、ある日、清掃スタッフ・中本(野呂佳代)が客室からTVがなくなったと言い出し、清美は高橋の「能力」を頼ることに。そこから高橋の人間離れした「嗅覚」で客室から紛失したTVの匂いを辿っていったところ、犯人が浮かび上がってくる。

 第1話を観てしみじみ感じるのは、「宇宙人」の善良さ。父が「あっちの星」出身の宇宙人で母はこっちの「ハーフ」という高橋だが、自慢話がダルいおじさん感を除き、基本的に困った人を放っておけず、「副作用」があるのに助けてしまうし、頼られると引き受けてしまうし、約束を破られても許してしまう。それに対し、人間たちはすぐに小さな嘘をつくし、簡単に約束も破るし、ズルいし、自分本位で、案外ろくでもない。

 でも、そんな人々の愚かさ、おかしさ、人間臭さは寓話的でも落語的でもあり、つい頼られると放っておけない宇宙人のお人好しぶりとの対比は、どこかのび太とドラえもんを見ているような気分にもなる。

 こうした小さな日常あるあるだけで永遠に笑えるのに、油断ならないのは、おそらくこの先、全く読めない展開が待っているであろうこと。

 なにしろ『ブラッシュアップライフ』を『架空OL日記』の延長線上のつもりで平和に楽しんでいたら、後半に入り、友人の命を救うために何度も人生をやり直す『魔法少女まどか☆マギカ』的ストーリーだったことがわかり、その巧みな構成に戦慄し、心が打ち震えた衝撃は今でも忘れられない。


 そう思うと、高橋の「副作用」も気になるし、おそらく回復に影響していそうな高橋のルーティン「休憩中に大浴場に入る」設定も、いつか回復不可の事態が起こるフックではないかという不安につながる。 

 しかし、第1話にしてすでにこの世界の人々に愛着がわいてしまっているだけに、今はまだ彼らの平和な日常にゆっくり浸かっていたい。この日々ができるだけ長く続くことを願ってやまないのだ。

■放送情報
『ホットスポット』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:市川実日子、角田晃広(東京03)、鈴木杏、平岩紙、木南晴夏、池松壮亮、菊地凛子、夏帆、坂井真紀、田中直樹、小日向文世
脚本:バカリズム
演出:水野格、山田信義、松田健斗
プロデューサー:小田玲奈、小田井雄介、野田健太
チーフプロデューサー:道坂忠久
音楽:fox capture plan
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:ソケット
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hotspot/
公式YouTube:https://youtu.be/a9PM7XBzm3Y
公式X(旧Twitter):https://x.com/hotspot_ntv
公式Instagram:https://www.instagram.com/hotspot_ntv
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@hotspot_ntv

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