有村架純、“悲劇のヒロイン”から“荒地に咲く花”へ 『花束みたいな恋をした』以降の変化
まだ真新しい2025年、有村架純がデビュー15周年を迎える。老若男女に愛される魅力で、ヒロインとして第一線で活躍し続ける有村。そんな彼女のキャリアを語る上で欠かせない、映画『花束みたいな恋をした』が1月10日にTBS系で地上波初放送される。
ちょうど4年前に公開された本作は、大学時代に偶然出会い、好きな音楽や映画が驚くほどに共通していることから意気投合した麦(菅田将暉)と絹(有村架純)の2015年から5年間にわたる恋を、同時代のカルチャーを交えて描いた“共感必至”のラブストーリー。2017年放送のドラマ『カルテット』(TBS系)でタッグを組んだ坂元裕二が脚本、土井裕泰が監督を務めており、2人の新作『片思い世界』も4月4日に公開を控えている中での放送となる。
印象的なシーンがある。絹が初めて麦の家を訪れた時、本棚に並ぶラインナップを見て、「ほぼうちの本棚じゃん」と嬉しそうにこぼすシーンだ。運命の相手、ソウルメイトーーそんなむず痒くなる言葉が脳裏をよぎるほどに、趣味嗜好が一致していた麦と絹。しかし、冒頭は2020年から始まり、2人は同じカフェでそれぞれ別のパートナーを隣に連れているのだ。なぜ、麦と絹は別れてしまったのかを、観客は2人の出会いから追っていくこととなる。
有村といえば、悲劇のヒロインという文脈で語られることが多い。自然体でありながら、私生活がベールに包まれていて、どこかミステリアスな雰囲気が作り手の創作意欲を掻き立てるのか。たしかに、彼女は物語の中で何かしら過酷な状況に晒されていることが多く、最初から最後までずっとハッピーな役は少ないかもしれない。絹も然り。だが、本作で私たちが目撃するのは、有村が体現する、あれほど分かり合えた麦と少しずつ価値観がズレていって、悩みながらも、最後は後ろを振り向かずに2人にとって最善の道を選び取る絹の強さである。その姿は、物悲しくも眩い光として心に残り続けるはずだ。
この映画に出演以降、有村は荒地に咲く花のような高潔さを持った役が増えたように思う。WOWOWオリジナルドラマ『前科者』とその後を描く映画では、保護司の阿川を好演。保護司とは、罪を犯した者の更生を助ける“無給”の国家公務員であり、コンビニのアルバイトと二足の草鞋で奮闘する阿川の奮闘が描かれる。自転車で派手に転び、鼻血を出したり、保護観察対象者から罵倒されたり、殴られたりと、散々な目に遭う阿川。それでも決して諦めず、職務を全うする阿川を有村は文字通り全身全霊で演じた。かつてないほど素朴な役だが、有村から放たれる途轍もないパワーに胸を打たれる。