『おむすび』佐野勇斗演じる翔也はなぜ“婿入り”を希望したのか 制作陣に理由を聞く
NHK連続テレビ小説『おむすび』が現在放送中。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。
第14週では、野球の道を諦めざるを得なくなった翔也(佐野勇斗)が、結との結婚を目標に星河電器の社員として業務に邁進。そんな中、翔也は「俺が米田翔也になろうと思う」と入籍を機に米田姓を名乗ることを提案するが、翔也の母・幸子(酒井若菜)から猛反対されてしまう。
制作統括の真鍋斎は「若い2人が恋愛をして、そのまま勢いで『結婚します』という流れになるけれど、手続き上の諸々や経済面など、家族を巻き込んだ心配事はどこの家にもあることで。その中のひとつとして、日本でなかなか認められない選択的夫婦別姓を“権利を求めて主張する”というよりは、“日常的な会話の一部”として描いています」と語る。
「結局この議論は、『なんかイヤ』という幸子さんの一言に尽きると思っていて。なんか許せないんだよね、と思っている人がいる一方で、理念が先に立つ人たちはきっと理屈で物事を考える。まさにあそこで展開されている議論は、日本中で行われていることなんじゃないかなと。そういった家庭での何気ない会話がひとつの豊かなコミュニケーションであるということを、このドラマではずっと示してきたつもりです」(真鍋)
翔也は米田姓を名乗る動機について、「これから俺にとって新しい人生になる。だったら、いっそ名前が変わるのもいい」「四ツ木結はなんかしっくりこない」などと話しているが、第14週の演出を担った原田氷詩もまた、翔也の言葉に嘘はないと語る。だが一方で、「無意識に野球を思い起こさせる四ツ木姓から離れたい、というのはあるかもしれない」と、翔也が抱える複雑な思いを明かす。
本人は立ち直っているつもりでいるけれど、実はまだ吹っ切れていない。そんな“無意識下の思い”が挫折からの立ち直りを描く上でのテーマとなっており、その演出について原田は「隣の机に置かれた幸太郎(大原由暉)の『練習中』という札や、野球ボールといったアイテムを強調して映すなどしていますが、翔也自身も、結との結婚に向けて家まで走って帰ったりと、過剰なほどに頑張っている。それは彼らしさでもあるけれど、後悔や野球のことを忘れるために、ああいう行動を取っているところもあるんです」と説明。
さらに真鍋は「沙智(山本舞香)が自分の経験から伝えた『焦らずに見守ってあげて』という言葉を、結がもう一度思い返すんですよね。つまりは、彼の思いを周囲が反射させている。翔也自身の心の中を言葉にはできませんが、そういったところで彼の本心を表現しています」と続けた。