『虎に翼』は主婦の描き方も秀逸だった 総集編で再確認したい花江×梅子×百合の生き様

『虎に翼』は主婦の描き方も秀逸だった

家族の一員としての幸福を求めた百合

 寅子の事実婚相手、星航一(岡田将生)の継母・百合(余貴美子)。最初の結婚相手との間に子どもができなかったことから婚家を追い出され、航一の父・朋彦(平田満)と再婚して、長きにわたり血縁のない子どもや孫たちの面倒をみてきた。

 彼女にとって自身の存在意義は「家族の世話を完璧にやり遂げること」で、星家に同居する運びとなった寅子や優未(毎田暖乃)にも柔軟に接し、一時は寅子の部下の子どもを預かろうと提案する。

 航一や孫たちと血の繋がりがないからこそ、完ぺきな家族であろうと家の中のことを120%の力でこなしていた百合。寅子の部下の子どもをベビーシッターとして預かる提案をした彼女は「初めて自分のために使えるお給金が出たら皆さんに鰻をご馳走するわ」と語る。外で働く人たちから財布を預かるのではなく、自身の労働の対価で家族に鰻をご馳走したいと話す笑顔は前向きだ。その後、百合は認知症を発症し、約6年後にこの世を去った。

 家の大黒柱であり、親友でもある寅子を専業主婦として支えた花江、夫や姑、長男から見下され続け、人生の後半に大きな選択をした梅子、家族の世話をすることこそが自らの幸福であると信じ、人生の幕を閉じた百合。3人とも寅子やよねのように社会という大舞台で戦うことはなかったが、確かにあの激動の時代を生きた女性たちだ。

 『虎に翼』では女性の社会進出の厳しさとその泥臭くも輝かしい道のりに加え、表舞台を裏から支える女性たちの姿もしっかり描かれた。このことを胸にもう1度彼女たちと向き合いたいと思う。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』総集編
NHK総合・BSP4Kにて、12月30日(月)放送
前編:07:20~8:45
後編:08:45~10:10
出演: 伊藤沙莉、岡田将生、土居志央梨、平岩紙、戸塚純貴、川床明日香、竹澤咲子、井上祐貴、尾碕真花、石橋菜津美、円井わん、木場勝己、矢島健一、松山ケンイチ、小林薫
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか

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