“平成”を切り取った名作映画5選 『リング』から『SUNNY 強い気持ち・強い愛』まで
長く短い人生の中で、元号が切り替わる瞬間を見守るのは、せいぜい2回くらいだろうか。平成から令和になって早6年。大抵は元号が変わるタイミングで、あったことや流行ったことを振り返るだろう。
ただ今回は、NHKの連続テレビ小説『おむすび』を観て平成を懐かしく思っている人が多いであろう今のタイミングで、“平成の空気”を感じられる映画を紹介したい。
『リング』(1998年)
「きっと来る……」
このフレーズを聞くたびに、テレビを観るのが怖くなっていた自分がいた。都市伝説の流行とも相まって、社会現象となった『リング』。この作品は、“Jホラー”の代表として世界をも巻き込んでいった。
噂が出回る恐怖のビデオテープ。それを観ると電話がかかってきて、1週間後に死ぬことを告げられるという。物語では松嶋菜々子演じる記者・玲子がこの不可解な現象を追うのだが、視聴者も一緒にその真相に近づいていくため、没入感のある恐怖を味わえる作品と言えるだろう。
あの有名なビデオから飛び出して人々を襲う“貞子”は終盤に登場するのにもかかわらず、ドキッとする音楽や緩急のある演出、そしてじっとりとした恐怖感がずっと追いかけてくる。松嶋菜々子に加え、真田広之や中谷美紀などキャスト陣も豪華で見ごたえもある。
『ウォーターボーイズ』(2001年)
筆者がよく覚えているのは、映画&ドラマで一世を風靡した『ウォーターボーイズ』だ。大量の魚たちを使って遊んだり、下ネタ多めだったりと、令和ではコンプライアンス的に難しそうな描写も多いが、その分底抜けに明るくて元気をもらうことができる。
映画は、廃部寸前だった水泳部にやってきた美人顧問の一言をきっかけに、シンクロナイズドスイミング(シンクロ)にチャレンジする物語。しかしシンクロを教えてくれるはずだった顧問が急な産休に入ってしまい、5人で演技を作らなければいけなくなってしまう。
平成の懐かしさだけでなく、部活に熱中した青春の日々を思い出してしまうこと間違いなし。また、ラストの文化祭のシーンでは、「シンクロ!(チャチャチャ)」と思わず声に出したくなるはずだ。とにかく明るくて全力で団結力が強い男子高校生たちを観ていたら、悩みなんて吹っ飛んでしまうだろう。
『ぐるりのこと。』(2008年)
平成に起きた「幼女誘拐殺人事件」「地下鉄サリン事件」など忘れてはいけない残虐な事件の数々が登場する『ぐるりのこと。』も平成を振り返る上で欠かせない作品だろう。
本作は、法廷画家として働くことになる夫・カナオ(リリー・フランキー)と出版社に勤める妻・翔子(木村多江)が命に向き合いながら、ささやかに生きていく物語。突如訪れた絶望に直面する姿と、希望の光に進み出す2人の愛に温かくなるストーリー展開だが、その一方で恐ろしい事件を起こした狂気的な犯人の姿が描かれる。考え方が両極端な人間が交差する社会の在り方を考えるきっかけにもなるに違いない。