エルサはまるでX-MEN!? 『アナと雪の女王』を“スーパーヒーローもの”として読み解く
その影響の大きさを考えると、アニメーション映画史どころか、映画史に残る作品となった『アナと雪の女王』(以下、『アナ雪』)。この作品の魅力についてはすでに多くの方が書かれています。
今回は少し視点を変えてこの作品の、特にメインキャラクターであるエルサについて語ってみます。筆者は、アメコミヒーロー映画に詳しいライターであり、エルサにこうしたヒーローものに通じる魅力を感じたからです。
最初に『アナ雪』を観たときに、エルサはX-MENだなと思いました。X-MENはマーベル・コミックの人気ヒーロー・チーム。“X”には様々な意味があるのですが、その一つがX=エクストラ、つまり通常の人間にはない“もう一つ”のパワーがあるということです。
彼らは、特殊な遺伝子を持って生まれたミュータント(突然変異の新人類)であり、その遺伝子の力で様々なパワー/超能力を発揮することができます。どんな能力が授かるかは人によって違うのです。その中の1人に、アイスマンという人気キャラがいます。彼は氷結能力=ものを凍らせる力を持っている。エルサはまさにアイスマンだなと。
こうした能力部分もさることながら、エルサにX-MEN色をより感じるのが、彼女の悩める部分です。実はX-MENの物語はヒーロー物でありながら、そうした特異な能力を持ってしまったがゆえの、ミュータントたちの苦悩を描いているのがポイントです。エルサが自分のパワーにとまどい、人々とのコミュニケーションを拒絶して生きていたあたりは、まさにX-MENでも描かれているストーリー。彼女の能力が魔法で授かったものではなく、生まれつきというのもミュータントのようでした。もしエルサがマーベルの世界に生きていたら、きっとX-MENにスカウトされたことでしょう。
一方、X-MEN以外にも、アメコミの中では氷結能力を武器にするキャラは多いのです。例えば、バットマンやスーパーマンを有するDCコミックには、悪のエルサともいうべきキラーフロストなるヴィランがいました。
また、バットマンに挑むMr.フリーズというヴィランがいます。映画『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』では、この役をアーノルド・シュワルツェネッガーが演じていました。彼の場合、科学の力/特殊な冷凍光線銃を使って人々や物事を凍らせます。超高速で走るヒーロー、フラッシュの物語にも、やはり冷凍光線銃を使うキャプテン・コールドというヴィランが登場。こういう氷系のキャラが多いのは、ビジュアル的にキレイだからかもしれません。氷結した世界というのは美しいし、また、熱いヒーローにクールに対峙するというのは画的にも面白い。