『無能の鷹』鷹野化した“鳩山”井浦新が愛おしい 仕事にも恋にも全力なキャラクターたち

『無能の鷹』鷹野化した井浦新が愛おしい

 さて、そんな迷走中の鳩山に気づきを与えてくれたのが、取引先である老舗和菓子店「福丸あんこ堂」の社長・小豆沢(梅沢昌代)の言葉だ。重大なミスを起こしてしまった鶸田(塩野瑛久)の謝罪に付き合うため、同社を訪れた鳩山。だが、鶸田が雉谷(工藤阿須加)に教えてもらった謝罪マニュアルに素直に従った結果、勘違いが勘違いを呼び、小豆沢をさらに怒らせてしまう事態に。なぜか一緒についていった鷹野はドラマ『半沢直樹』(TBS系)の真似をし始めるわ、小豆沢に親のことまで持ち出して怒られ、タガが外れた鶸田は「福丸あんこ堂」が働きたくない会社第1位に選ばれたことを喋ってしまうわで、収集がつかなくなってしまう。

 しかし、そのことをきっかけとなり、言いたいこと言えない空気にさせてしまっていた自分のワンマンぶりを反省する小豆沢。「言葉が足りないから不信感が増すの。だから何でも言い合える関係になりましょ」という彼女の台詞は、仕事上の関係においても、パートナーとの関係においても言えることだ。

 鳩山は自分のことを普通でつまらないと思っているかもしれないけれど、そんな鳩山を必要としている人がいる。確かに鷹野は突拍子もない性格で面白いが、彼女が彼女のままでいられるのは無理に変えようとしない教育係の鳩山がいてこそ。妻の美沙も普通の鳩山を愛している。なにより高校時代からの付き合いにもかかわらず、自分で「アホだなあ」とか「キモいなあ」と思ってしまう行動をとってしまうほど、妻を愛しているのはすごいこと。それは普通のことのようで、全然普通じゃない。

 開発部の鵤(宮尾俊太郎)も鵜飼(さとうほなみ)の好みを勝手に決めつけ、無理にロックな自分を装っていたが、それは違った。鵜飼が鵤を好きなのは、世界一自分に優しいから。そういうことも話してみなければわからない。今ある関係を続けたい大事な人には、愛情も不安に思っていることも言葉にして伝えることが大切だ。

 一方で、それは大人になればなるほど難しくて、一人で勝手に悶々としてしまうことも多い。でもそうやってたくさん悩んだり、問題を解決するためにいろいろ試してどんどん変な方向にいってしまったりする自分のことも誰かが微笑ましく見守ってくれているのかもしれない。だって、仕事にも恋にも全力な本作のキャラクターたちはおかしくも愛おしいから。

 本作が次週に早くも最終回を迎えることで、そんな彼らに会えなくなることが何よりも寂しい。本気で誰かを好きになる気持ちはまだ知らないが、鷹野に対して愛情が芽生えかけている鶸田。互いの足りない部分を補い合って、数々の奇跡を起こしてきた二人の恋の行方も気になるところだ。

■放送情報
『無能の鷹』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15放送
出演:菜々緒、塩野瑛久、井浦新、工藤阿須加、さとうほなみ、高橋克実ほか
原作:はんざき朝未『無能の鷹』(講談社「Kiss」連載)
脚本:根本ノンジ
音楽:鈴木真人
演出:村尾嘉昭、棚澤孝義、高橋由妃
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理 (テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
制作著作:テレビ朝日、MMJ
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/muno_no_taka/
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