桜井ユキが『ライオンの隠れ家』にもたらす奥行き “プライド”を拡大させる工藤の存在
「僕たちにとっては、この家で生きていくことがすべてだった」という、オープニングタイトル直前の洸人(柳楽優弥)のモノローグひとつで、小森家の日常に大きな変化が訪れること、または小森家という“安全なプライド”が脅かされることが予感できる。
11月22日放送の『ライオンの隠れ家』(TBS系)第7話は、ある意味ではそんな嵐の前の静けさなのかもしれない。少なくとも、小森家という“家”を離れ別の場所に安全を求める点で、すでに大きな変化が訪れてしまったともいえる。
ある朝、玄関の呼び鈴が鳴り、小森家に工藤(桜井ユキ)が訪ねてくる。洸人が愛生(尾野真千子)の子どもを匿っていると気付いている彼女は、その理由を追及するのだが、洸人は「絶対に記事にしないでください」と頭を下げるだけ。そんな工藤の忠告通り、小森家の近所には他の週刊誌の記者も現れはじめる。このままでは愁人(佐藤大空)が危ないと感じた洸人は、同僚の貞本(岡崎体育)に事情を打ち明け、彼の親戚の別荘がある佐渡島に愁人と美路人(坂東龍汰)を連れていくことを決断する。
小森家のある茨城県と、愛生が夫・橘祥吾(向井理)と暮らしていた山梨県、工藤の週刊誌の編集部がある東京と、これまで3つの離れた場所が結び付けられて成立していたこの物語に、4つ目の舞台――佐渡島が加わる。劇中で移動の工程がきちんと描写されているように、フェリーに乗って(おそらくその前には新幹線にも乗っているだろう)、のどかな田舎道をしばらく歩いてようやくたどり着くほど人里離れたところにある貞本の別荘。まさに“隠れ家”と呼ぶには格好のロケーションだ。
とはいえ終盤で、その新たな隠れ家に工藤があっさりとたどり着いてしまうあたり、この“プライド”も簡単に侵食されてしまうのではないかとちょっぴり不安になってしまうのだが、今回のエピソードは工藤が“どちら側”なのかを見出す大きなターニングポイントとなっている以上、そこは目を瞑ってもいいだろう。洸人の言葉を受けて、彼女なりに頭のなかで事情を整理し、愁人が生きているという記事の公開を見送ろうとした工藤。しかしその信念は、後輩の天音(尾崎匠海)によって無下にされ、記事が公開されてしまう。