『放課後カルテ』牧野が篠谷に放った厳しい言葉 森川葵が不器用かつ弱い役どころを好演

『放課後カルテ』牧野が篠谷に放った言葉

 その後、凛があのコンビニで色付きリップを万引きしたことが判明。ベットに入っても眠りにつけないほど心身ともに追い詰められていた篠谷は倒れてしまう。そうやって支障が出ても「眠りたいんじゃなくて働きたいんです」と自分をないがしろにする篠谷に、牧野が放ったのが「自分はその程度だってこと自覚しろ」という言葉だ。一見厳しく、とくに理想と現実のギャップを埋めるために精一杯頑張ってきた篠谷にはグサッとくる言葉だが、中身はとても大事なことを言っている。

 牧野ははっきりした性格で、やりたくないことはやらない、できないことはできないと自分の意志を一旦ちゃんと表明する。それは己の限界をわかっているからで、その限界を超えたことから自分を守るためなのだろう。そしてひいてはそれが、他人にも目を向けることにも繋がる。牧野が観察眼に優れていて他人の異変にすぐ気づけるのは、それだけの余力やゆとりが彼の中にあるということ。誰かの力になりたいなら、まずは自分が心身ともに健康で満たされていなくちゃいけない。

 結局、牧野はなんだかんだ言って優しいのだ。篠谷が保健室のベッドから起き上がってくる時にわざわざ遅くまで残っていたことを悟らせないために帰るふりをする細やかな気遣いも印象的だったが、感動したのは同僚たちに頼んで篠谷が溜め込んだ仕事を変わってもらっていたこと。篠谷が職員室に戻る頃には、ほとんどの仕事が片付いていた。仲間がいるのだから、1人ですべてを背負う必要はないのだ。

 篠谷は不器用で、久しぶりにご飯の美味しさを思い出しただけで人目をはばからずに泣いてしまうような弱いところもあって、多くの人が想像する完璧な大人像とはかけ離れているかもしれない。でも、そんな篠谷だからこそ寄り添える気持ちがある。しっかりと睡眠を摂って視界が一気に開けた藤谷が向き合うのは凛だ。野外学習でれいか(畠中一花)が中心を担う女の子グループと仲良くなった凛。だが、親が厳しく、流行りの色付きリップを持っていて、休みの日は原宿に遊びに行くれいかたちの話についていけていなかった。

 コンビニで色付きリップを万引きしたのも、「しのや先生としゃべった人ムシしよーね」というメモを書いて教壇に置いたのも、本来の彼女の意志ではない。れいかたちと一緒にいたかったから、仲間はずれになるのが怖かったから。篠谷は自分もメモ1つで児童と向き合うのが怖くなる1人の人間だということを伝えた上で、その不安や恐怖に寄り添う。「嬉しいって思うことも意外なところからやってきたりするよ。だから絶対大丈夫」という藤谷の言葉は何の根拠もない。だけど、意外とありのままの自分を誰かが見てくれているものだから。

 同僚たちが篠谷を気にかけ、協力してくれたのも、普段から一生懸命頑張っている彼女を見ているからこそ。児童も藤谷が疲れていることに気づき、保健室に設置された目安箱に彼女を気遣う言葉を投書していた。同じように、れいかたちと一緒にいるのにどこか寂しそうな凛のことも、ゆき(増田梨沙)やミカ(前田織音)が気にして声をかけてくれる。そんな身近にいる温かな存在に気づけるように、弱い自分を大事にしてあげたい。そう思わせてくれた。

■放送情報
土ドラ9『放課後カルテ』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
出演:松下洸平、森川葵、ホラン千秋、平岡祐太、高野洸、六角慎司
原作:日生マユ『放課後カルテ』(講談社『BE・LOVE』所載)
脚本:ひかわかよ
演出:鈴木勇馬ほか
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:岩崎秀紀、秋元孝之、大護彰子
協力プロデューサー:大平太
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/houkagokarte/
公式X(旧Twitter):https://x.com/houkagokartentv
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