『放課後カルテ』牧野の苦い過去が明らかに 涙目になった松下洸平の必死の訴え
小児科の待ち合いは常に患者でいっぱいで、多忙の中で牧野はできることを精一杯やっていた。それに優しい言葉をかけたとしても、患者の病気が治るわけではない。だけど、貴之と真琴が最初に診察に訪れた時、牧野が二人に背を向けず、しっかりと目を見て不安を取りのぞけるような言葉をかけていたら、ここまで関係はこじれずに信頼関係のもとでもっとスムーズに治療が進んだだろう。「患者の言葉を聞くのも、保護者に寄り添うのもすべての理解が治療に繋がるんだ」という高崎(田辺誠一)の言葉で、ようやく牧野は自分の間違いに気づけた。
そうした苦い過去があるからこそ、牧野は羽菜と向き合い、その言葉を聞こうとしたのだろう。そんな牧野は「来てもらえたのも、話聞いてもらえたのも、嬉しかったです」と羽菜に言われて胸が熱くなったのか一瞬涙目になる。その笑顔だってもしかしたら見ることがかなわなかったかもしれない。あとで後悔しても遅い。だから牧野は自分と同じように羽菜に背を向けている真吾に「傷は隠していた言葉の全てです。父親である貴方がそれを受け止めてください。水本羽菜をちゃんと見てください」と必死で訴えかける。
牧野が言う通り、羽菜の傷もまた彼女が必死で自分の苦しみを伝えようとしていた証だ。だけど、大人は忙しさを理由に相手と向き合うことを避け、そういう小さな情報を見逃してしまう。一方で、子どもは周りのことをよく見ている。羽菜も、両親の心が離れてしまった原因も、母親が出ていった理由も、自分がそれぞれの嫌なところを受け継いでいることも全て知っていた。
以前、救急医療に携わる人から自傷行為で運ばれてきた患者に「自分を大事にしなさい」と責める言葉はかけてはいけないという話を聞いたことがある。なぜなら、自分を大切に思えないから自分を傷つけるのであって、そう思わせた人間が他にいると。だから代わりに心を込めて傷を手当てするのだとその人は言っていた。今まで両親から愛情を受け取ることができなかった羽菜が自分を大事にできるはずがない。真吾は、羽菜の傷は自分たち夫婦がつけたものであることを認め、「もう二度と傷つけさせない」と誓う。真吾の手当ては牧野よりもたどたどしいが、その手から伝わる愛情がきっと羽菜の心を守ってくれるだろう。
一方で、どれだけアンテナを張っていても親だけでは見過ごしてしまうことももちろんある。だけど、学校には牧野もいて篠谷もいる。ここまで羽菜が自分を壊さずにいられたのは、彼女をさりげなく気遣ってきた藤野(上田琳斗) の存在も大きい。誰一人が背負う必要はなく、関わる人すべてで見守っていけばいいのだ。だが、篠谷は自分の無力さを責めており、羽菜の問題が解決してもか表情は曇っている。次週はそんな篠谷の体と心に牧野が向き合うことになりそうだ。
■放送情報
土ドラ9『放課後カルテ』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
出演:松下洸平、森川葵、ホラン千秋、平岡祐太、高野洸、六角慎司
原作:日生マユ『放課後カルテ』(講談社『BE・LOVE』所載)
脚本:ひかわかよ
演出:鈴木勇馬ほか
音楽:得田真裕
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:岩崎秀紀、秋元孝之、大護彰子
協力プロデューサー:大平太
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
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