『ライオンの隠れ家』小森家3人の関係がこの上なく愛おしい “不在”の尾野真千子の存在感

『ライオンの隠れ家』小森家の愛おしさ

 山梨県での母子行方不明事件を伝えるニュースで女性の遺体が発見されたと報じられ、それを見たライオン(佐藤大空)はショックで熱を出して寝込んでしまう。看病する洸人(柳楽優弥)はライオンを小児科へと連れて行くのだが、問診票を書く段階で自分がライオンのことをほとんど知らないと改めて思い知らされる。

 『ライオンの隠れ家』(TBS系)は11月1日に放送された第4話で、物語のひとつの大きな転換に向けた動きが見えはじめる。それはもちろん、ここまで“不在”であった愛生(尾野真千子)の生死に関する情報の進展に他ならない。

 “母親の死”という、小さな子どもが背負うにはあまりにも大きな痛みに直面することになったライオンに、ぎこちないながらも親代わりの立場として寄り添う洸人に対し、美路人(坂東龍汰)はライオンと同じ目線から向き合っていく。洸人と美路人の両親も数年前に他界しており、美路人自身もその痛みをはっきりと記憶しているからであろう。

「死ぬのは寂しいです。悲しいです」

 そう呟き仏壇を見つめた美路人は、眠っているライオンの隣にいつものぬいぐるみをそっと置いてあげる。

 この後のシーンで洸人と美路人は、ライオンの年齢についての話題となり、この数日の間にライオンが6歳の誕生日を迎えた可能性があることにたどり着く。そしてライオンの誕生会を企画するに至るわけだが、ここで美路人が言う「誕生日は幸せな日です」という言葉が、先述の“死”にまつわる感情と対比になっていることは明白だ。生まれること、生まれた日を祝うことと、死ぬこと。正反対の両者に、美路人は言語化されたはっきりとした感情を持ち合わせている。

 また、“誕生日”という日に対しては、異なる方向性での対比関係も形成されているとみえる。子どもにとって普段の日常よりも何倍も特別なイレギュラーの日である誕生日に対し、あまり望ましくないイレギュラーである発熱による体調不良。かたや明確に歳を重ねたことを表す成長過程のひとつであり、もう一方も身体的な成長を遂げる上で通過せざるを得ないもの。幸せなものや嬉しいものと、つらかったり悲しかったりするものは、常に表裏一体の関係にあるのだと示しているかのようだ。

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