日向坂46『ゼンブ・オブ・トーキョー』が映す“青春の全て” 東京に憧れを抱く全ての人へ
興味深いのは、別行動をするための方便として使われた「別の世界線にいる」というセリフだ。そこで思い出したのは、地方出身の筆者にとって、東京というのは人生のタイミングごとに異なる意味合いを持ってきたこと。修学旅行先であり、観光すべき名所であり、就職先となり、そして生活拠点となる。そんな、バックグラウンドを誰とも共有していないことから生まれる地方出身者の孤独は、みんなに置いていかれた池園さんが感じていたものと似ていて、ある日の自分と思わず重なる瞬間があった。彼女たちの“分岐した世界線”はある形で収束するのだが、ふつうの高校生の、“ふつう”の修学旅行からは学ぶべきものが確かにある。
東京で迷ってばかりの『ゼンブ・オブ・トーキョー』はすなわち“ロスト・イン・トーキョー”であり、それは迷ってばかりの私たちの姿でもある。それでも、やっぱり“東京”に憧れていたいし、ずっと“おのぼりさん”でありたいと思う。それこそが私にとっての東京なのだから。
■公開情報
『ゼンブ・オブ・トーキョー』
全国公開中
出演:正源司陽子、渡辺莉奈、藤嶌果歩、石塚瑶季、小西夏菜実、竹内希来里、平尾帆夏、平岡海月、清水理央、宮地すみれ、山下葉留花、小坂菜緒、真飛聖、八嶋智人
監督:熊切和嘉
脚本:福田晶平、土屋亮一
配給:ギャガ
©2024 映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」製作委員会