『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』北米No.1もなぜ“苦戦”? 興収と評価を真剣に分析する
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の製作費は2億ドルで、黒字化には4億5000万ドルの売上が必要だと報じられているが、ここにも疑問は残る。フィリップスは公開前のインタビューで「製作費2億ドル」との報道を「バカげたもの」と一蹴しているのだが、なぜかこの発言はことごとく無視されているのだ(一方、フィリップスは前作の製作費6500万ドルよりもずっと予算があったことは認めている)。
本作の興行成績や評価が、今後、映画スタジオの判断に少なからぬ影響を与えることはありうる。コミックの野心的な(作家主義的な)再解釈や、前作の期待を裏切る続編に対し、観客のヘイトを招くおそれがあるとして消極的な反応が出ることもあるだろう。そのことは、現在のポップカルチャーを覆っているファンダムの有害性や、巨大フランチャイズが行き詰まってゆく現象にも直接つながっている。しかし映画製作がビジネスである以上、この問題を切り離すことはできない。
最新作『Megalopolis(原題)』が同じく興行的苦境に立たされている巨匠フランシス・フォード・コッポラは、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の公開を祝し、監督のフィリップスを「傑作『ハングオーバー!』以来、つねに彼は観客の一歩先を行っている。観客が予想しているようなことは絶対にしないのだ」と賞賛した(※)。批評家や観客、ファンの期待に応えることだけが映画というアートフォームの使命ではない、またフィルムメイカーの仕事ではないという矜持がここには見え隠れしている。
ほかにも興味深い報道がある。今年の賞レース全体の様子を占えば、ホアキン・フェニックスやレディー・ガガ、音楽のヒドゥル・グドナドッティル、撮影監督のローレンス・シャーらがアカデミー賞にノミネートされる可能性は十分にあるという。アカデミー賞の投票者と批評家・観客には差異があるため、酷評を受けた映画が候補入りすることも珍しくないからだ。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は10月11日公開。非常に挑発的な映画であるがゆえに、できるだけ多くの観客の目にさらされ、お互いが問い直されることを期待したい。
北米映画興行ランキング(10月4日〜10月6日)
1.『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(初登場)
4000万ドル/4102館/累計4000万ドル/1週/ワーナー
2.『野生の島のロズ』(↓前週1位)
1870万ドル(-47.8%)/3997館(+35館)/累計6398万ドル/2週/ユニバーサル
3.『ビートルジュース ビートルジュース』(↓前週2位)
1032万ドル(-36.4%)/3576館(-228館)/累計2億6550万ドル/5週/ワーナー
4.『トランスフォーマー/ONE』(↓前週3位)
535万ドル(-41.6%)/3106館(-864館)/累計4722万ドル/3週/パラマウント
5.『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(→前週5位)
280万ドル(-34.2%)/2279館(-392館)/累計3258万ドル/4週/ユニバーサル
6.『Sam and Colby: The Legends of the Paranormal(原題)』(初登場)
175万ドル/302館/累計175万ドル/1週/XPLR Productions
7.『ホワイトバード はじまりのワンダー』(初登場)
153万ドル/1018館/累計153万ドル/1週/ライオンズゲート
8.『デッドプール&ウルヴァリン』(↓前週7位)
152万ドル(-45.3%)/1605館(-370館)/累計6億3383万ドル/11週/ディズニー
9.『The Substance(原題)』(↑前週11位)
134万ドル/686館(-1026館)/累計973万ドル/3週/MUBI
10.『Megalopolis(原題)』(↓前週6位)
105万ドル(-73.8%)/1854館(変動なし)/累計648万ドル/2週/ライオンズゲート
(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2024年10月7日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
参照
※ https://www.instagram.com/p/DAwJ27kSW-f/
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W40/
https://variety.com/2024/film/box-office/joker-2-box-office-opening-weekend-1236166378/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/joker-folie-a-deux-box-office-d-cinemascore-1236025168/
https://deadline.com/2024/10/box-office-joker-folie-a-deux-1236107521/
https://deadline.com/2024/10/joker-folie-a-deux-global-international-box-office-1236108629/
https://variety.com/2024/film/features/todd-phillips-joker-2-movie-interview-1236111122/
https://variety.com/2024/film/awards/lady-gaga-joaquin-phoenix-joker-2-oscar-noms-1236161763/
■公開情報
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
10月11日(金)より全国公開
(日本語吹替版・字幕版同時上映 Dolby Cinema/ScreenX/4D/ULTRA 4DX/IMAX)
監督:トッド・フィリップス
出演:ホアキン・フェニックス、レディー・ガガ、ブレンダン・グリーソン、キャサリン・キーナー、ザジー・ビーツ
配給:ワーナー・ブラザース映画
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