『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』に刻印された激動の平成 警察だから描けたサラリーマン社会

『踊る大捜査線2』に刻印された昭和と平成

 『踊る大捜査線』(以下、『踊る』)プロジェクトの12年ぶりの新作となる2部作の映画『室井慎次 敗れざる者』(10月11日公開)、『室井慎次 生き続ける者』(11月15日公開)の劇場公開を記念して、現在フジテレビでは『踊る』シリーズのテレビドラマや映画の過去作が立て続けに放送されている。

 10月5日の『土曜プレミアム』で今回放送されるのは、2003年に劇場公開された本広克行監督、君塚良一脚本の映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(以下、『踊る2』)。本作の興行収入173.5億円は実写邦画歴代興行収入第1位であり、『踊る2』の成功で名実ともに国民的作品となったと言っても過言ではないだろう。

 物語の舞台は『踊る大捜査線 THE MOVIE』(以下、『踊る1』)で描かれた副総監誘拐事件から5年後となる2003年。

 かつて空き地だらけだったお台場は人気観光スポットへと様変わりし、青島俊作(織田裕二)たち湾岸署の面々も、観光客が増えたことで起こる新たな事件に追われる日々を過ごしていた。

 3連休の初日となる11月22日。湾岸署の管轄内では女性を狙った吸血鬼を模した男による連続噛みつき通り魔事件と、家族ぐるみでの連続スリ事件が起こっていた。そして、会社役員の他殺体が新たに発見され、特別捜査本部が湾岸署に設置される。

 警視庁から管理官の室井慎次(柳葉敏郎)と共にやってきたのは、捜査一課初の女性管理官・沖田仁美(真矢みき ※現・真矢ミキ)。出世のために広報のカメラと共に乗り込んできた沖田は所轄の刑事たちを見下し、無理難題を押し付けていく。しかし、リーダー不在の組織体系で動く複数犯の挑発に翻弄され、捜査は後手後手に回ることとなる。

 『踊る2』は前作『踊る1』の内容を踏襲した上で、スケールアップを図った内容となっている。

 まず何より印象に残るのが、本広克行監督が得意とするモブシーン。豪華客船でのSATと犯人役を演じる青島たちとの訓練シーンに始まり、観光地となったお台場の街や湾岸署の中はとにかく人だらけで、画面狭しと大勢の人が行き来している。

 そして、青島たち刑事が移動しながら会話していると、背後にさまざまな人物が映り込むのだが、彼、彼女らは細かい芝居をおこなっていて、何か作業をしながら動いているのが目に入る。背後に映る人物の動きには、のちの伏線となる意味が込められたものもあれば、その場限りのものもあるのだが、結果的に青島たち所轄の刑事たちの物語の外側でも、それぞれの人々の物語が同時進行で動いているように感じる。

 こういった背後に映る人物の描き方は、アメリカの医療ドラマ『ER 緊急救命室』の影響を受けたものでテレビシリーズの時から健在だったが、『踊る2』では人数が増えたことで、より厚みを増している。こういった雑多な人間描写があるからこそ、群衆の中に紛れ込んだ正体不明の犯罪者たちに対する恐怖感が、より際立つ作りとなっている。

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