圧倒的センスと才能の塊 2024年の覇権作『ダンダダン』を観ずして令和アニメは語れない

『ダンダダン』を観ずに令和アニメは語れない

若山詩音×花江夏樹×水樹奈々らが高めた“キャラの解像度”

 さて、完成度の高いアニメに欠かせないピースが声優陣の演技なのだが、本作は本当にメインキャストのレベルが高すぎる。特に注目すべきは、モモ<綾瀬桃>役の若山詩音。2023年に第17回声優アワードで新人声優賞を受賞しており、近年の作品では『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』の川合麻依役、『リコリス・リコイル』の井上たきな役、『負けヒロインが多すぎる!』の焼塩檸檬役などで知られている。

 それこそ彼女は女子高生役も多いが、たきなと檸檬などかなりキャラクターの性格が異なる、声色の違う役を演じる幅広さがある。しかし一貫して、「女性(女子高生)が会話する時の本当のトーン」が感じられ、役の説得力やリアルさを一気に引き上げているのだ。特に今回演じるモモのギャル味への解像度が素晴らしい。そんな彼女との素晴らしい掛け合いを披露するのは、オカルン<高倉健役>役の花江夏樹。もとより知名度も高く、本作でも安定した演技力と実力を提示している。

 2人の主役の脇を固めるのも豪華すぎるキャスト陣。同級生のアイラ<白鳥愛羅>役に佐倉綾音、幼馴染のジジ<円城寺仁>役に石川界人と、今をときめく売れっ子が担当する。そしてモモの祖母・星子役に水樹奈々、ターボババア役に田中真弓とレジェンド声優が参加。しかも怖いくらいに贅沢なのが、怪異の役を中井和哉(セルポ星人役)、大友龍三郎(フラットウッズモンスター役)、井上喜久子(アクロバティックさらさら役)、関智一(ドーバーデーモン役)、杉田智和(太郎役)、平野文(花役)ら大御所が演じる点である。怪異はそのほとんどが第1~2話のみの登場で、もはやゲスト声優に近い立ち位置である。それにもかかわらずここまで陣営が作られている点からも、製作陣の本気度が窺えるのだ。彼らの演技によって、原作の持つ軽快でくだらなくもリアリティ溢れる言動に息が吹き込まれ、キャラクターたちはより魅力的な存在になっていた。

 人気原作のアニメ化作品となる『ダンダダン』。その完成度に世界が注目している中、ただのアニメを作るのではなく、幅広い視聴層を惹きつけるような自由なアート的解釈を提示する作品作りをサイエンスSARUはやってのけたように感じる。本作はおそらく、今期の覇権アニメとして以上に、近年のアニメ文化の急成長と一般的に認知され受け入れられる潮流の中で重要な意味をなす作品になるのではないだろうか。

■放送情報
TVアニメ『ダンダダン』
MBS/TBS系にて、10月3日(木)スタート 毎週木曜0:26~放送
キャスト:若山詩音(モモ/綾瀬桃)、花江夏樹(オカルン/高倉健)、水樹奈々(星子)、佐倉綾音(アイラ/白鳥愛羅)、石川界人(ジジ/円城寺仁)、田中真弓(ターボババア)、中井和哉(セルポ星人)、大友龍三郎(フラットウッズモンスター)、井上喜久子(アクロバティックさらさら)、関智一(ドーバーデーモン)、杉田智和(太郎)、平野文(花)
原作:龍幸伸(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:山代風我
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン:恩田尚之
宇宙人・妖怪デザイン:亀田祥倫
アニメーション制作:サイエンスSARU
オープニングテーマ:Creepy Nuts「オトノケ」
エンディングテーマ:ずっと真夜中でいいのに。「TAIDADA」
©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会
公式サイト:https://anime-dandadan.com/
公式X(旧Twitter):@anime_dandadan

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