『光る君へ』吉高由里子が“母”として見せた今までにない切なさ 賢子役・梨里花の名演も
吉高は、まひろと賢子について「さみしい気持ちがお互いの距離を離しちゃった関係性」だと述べている。「ギューってね、まひろも『ごめんね』ってギュッてしてあげられたらよかったんだけど、そうもいけないタイプなんだろうね、まひろもね」と振り返り、「お互いのさみしさが、2人の再会の溝が埋まらなかった感じになっちゃった日かな」とも語った。
実の娘である賢子との関係をなかなか深められないまひろは、彰子の前や『源氏物語』の執筆に向かう時とは違って、自信のない印象が強い。ただ、この親子の溝をうまく埋められずに苦悩する姿、吉高のさりげない表情や佇まいに表れる思い悩む様には人間味がある。人生うまくいくことばかりではないと思わせる出来事を前に、まひろが動揺したり困惑したりする様を吉高がごく自然に表すからこそ、彼女の一喜一憂が胸に響く。
今後の親子関係にほんの少しだけ期待があるとすれば、「母上なんか大嫌い!」と言い捨て屋敷を飛び出した賢子が涙を流していたこと。乙丸(矢部太郎)が心配そうに見つめる中、泣いていた賢子。その姿は直前に言い捨てた言葉とは裏腹にとても悲しげで、憤りから涙を流しているというよりも素直な寂しさを覚えた。まひろと賢子がお互いの素直な気持ちを伝えられる日が来ることを願いたい。
第37回のタイトルは「波紋」。あらゆる意味が込められていると思うが、物語終盤でのまひろと道長のやりとり、特に道長が発した台詞に心が動揺した視聴者は少なくないはずだ。道長は、内裏の藤壺に盗人が押し入った時、彰子のもとへ駆けつけたまひろへお礼を言う。まひろと距離を縮め、「お前もよくやってくれた」「これからも中宮様と敦成親王様をよろしく頼む」と言い伝える道長は、こう続けた。
「敦成親王様は次の東宮となられるお方ゆえ」
第36回で、虚ろな目をして「皇子であったか……」と呟いた道長の姿が思い出される。「次の……」と言葉を詰まらせるまひろは道長の変化を感じ取ったに違いない。きな臭い空気が漂い始めている。
参照
※ https://www.nhk.jp/p/hikarukimie/ts/1YM111N6KW/blog/bl/pyVjX9MK7y/bp/pwn95kPaMJ/
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK