『虎に翼』土居志央梨による渾身の「はて?」 よねの弁論に込められた無力な社会への嘆き

『虎に翼』土居志央梨による渾身の「はて?」

 そしてよねは、今回の事件を憲法第14条と第13条に記された権利を美位子が取り戻そうとした際に、父親から監禁と暴力による妨害を受けた結果であって、正当防衛もしくは過剰防衛に該当すると主張。「もし今もなお、尊属殺の重罰規定が憲法第14条に違反しないものとするならば、無力な憲法、無力な司法、無力なこの社会を、嘆かざるを得ない。著しく正義に反した原判決は、破棄されるべきです」と結んだ。

 よねの弁論はまさに純度の高い正論だ。そこには、すべての国民が法の下に平等で、差別されず、個人として尊重される社会を切に願う気持ちが込められている。日本国憲法自体は20年以上前に施行されたものだが、そこに記された基本的人権の尊重が真に成されたとは言いがたく、ゆえに美位子のような被害者を生んだ。

 「私の中に辛うじて残る特別な私が消えぬうちに消えるしかない」という言葉を残してこの世を去った美佐江(片岡凜)もその一人に思える。死因は“事故死”でも、彼女を殺したのは特別じゃなければ生きている価値がないと思わせた社会の風潮なのではないだろうか。

 法律の世界から離れ、家具職人になることを決めた朋一(井上祐貴)。それを思いついた時、法律を学んだ時と同じぐらい胸が熱くなったという彼の選択を航一(岡田将生)は尊重する。優未(川床明日香)のこともそう。以前、彼女が大学院を辞めると決断した際には猛反対したが、寅子に諭され、今は自分の道を模索する優未のことを心配しつつも見守っている。何者かになる必要はないし、特別な人間になどならなくてもいい。誰もがありのままで尊重されるべきなのだと、誰かが美佐江に伝えられていたら死は防げたかもしれない。あと一歩のところで美佐江の手を離してしまった寅子はその後悔を胸に、彼女の娘である美雪(片岡凜・二役)と向き合う。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:出演:伊藤沙莉、岡田将生、土居志央梨、平岩紙、戸塚純貴、川床明日香、竹澤咲子、井上祐貴、尾碕真花、石橋菜津美、円井わん、木場勝己、矢島健一、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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