『SHOGUN 将軍』がほぼ総取り? 第76回エミー賞受賞結果を現地ライターが大予想
2024年はエミー賞が2回行われる特別な年。2023年9月に予定されていた第75回エミー賞授賞式は、脚本家協会と俳優組合のダブルストライキ真最中で、2024年1月に延期。2023年6月から2024年5月末までに放送・配信された作品から選ぶ第76回は、日本でも報道されている通り『SHOGUN 将軍』(FX/ディズニープラス)がぶっちぎりの強さでエミー賞を席巻しそう。俳優賞などが発表されるプライムタイム・エミー賞の前週に行われたクリエイティブ・エミー賞では、1番組の単年度として過去最多の受賞となる14部門で受賞している。
『SHOGUN 将軍』は合計25部門でノミネート。番組開始当初はワンシーズンのリミテッドシリーズ扱いだったが、好評を受けてシーズン2と3への更新が発表された。それによってリミテッドシリーズ部門からドラマ部門へとシフトしたことも、大量ノミネートの一因となっている。同じくFX/ディズニープラスの『一流シェフのファミリーレストラン』は、単年度のコメディシリーズとして歴代最多の23部門でノミネート。この2作品が牽引し、FXは合計93ノミネートを獲得している。『SHOGUN 将軍』の大量ノミネート、真田広之や浅野忠信が受賞確実視されているから、今年はようやく「エミー賞」が日本でも知られるようになるかもしれない。
一方、『ザ・クラウン』と『私のトナカイちゃん』が好調だったNetflixは107ノミネートで最多ネットワーク(放送局)に。煽りを受けたのが、かつて“ドラマ大国”だったHBO。ノミネーション・受賞ともにトップクラスの『メディア王』(HBO/U-NEXT)がシリーズフィナーレを迎え、人気シリーズの『THE LAST OF US』(HBO/U-NEXT)、『ホワイト・ロータス / 諸事情だらけのリゾートホテル』(HBO/U-NEXT)も新シーズン放送待ちという“谷間の年”だったのも大きい。だが、シーズン2で人気・周知が高まっていた『TOKYO VICE』(HBO/WOWOW)がシーズン更新されなかったことや、パク・チャヌクとロバート・ダウニー・Jr.が組んだスパイサスペンス『シンパサイザー』(HBO/U-NEXT)など、「もっとキャンペーン頑張れたでしょうに!」という作品もある。
エミー賞に投票するのは、北米でテレビ番組製作に関わるテレビジョン・アカデミー会員約25000名。6月からFYC(For Your Consideration、投票ご検討ください)イベントが多数開かれ、街中のビルボード広告やオンライン・印刷媒体の業界誌に広告が出される。体感ではディズニー系列のFXやHuluの広告が多く見られ、優れた作品であることはもちろん、FYCに対する気力迫力資金力の違いを感じさせた。FYCの通りになるか、それとも……? 主要部門の予想をしてみたい。
第76回プライムタイム・エミー賞 ノミネーション一覧
★=本命 ●=次点 ▲=サプライズ
ドラマ部門作品賞
★『SHOGUN 将軍』(FX/ディズニープラス)
『ザ・クラウン』(Netflix)
『ザ・モーニングショー』(Apple TV+)
『ギルデッド・エイジ –ニューヨーク黄金時代-』(HBO/U-NEXT)
『窓際のスパイ』(Apple TV+)
『Mr. & Mrs. スミス』(Prime Video)
『フォールアウト』(Prime Video)
『三体』(Netflix)
『SHOGUN 将軍』 一択。他の作品の追随を許さないほど強い。
コメディ部門作品賞
『アボット エレメンタリー』(ABC/ディズニープラス)
★『一流シェフのファミリーレストラン』(Hulu/ディズニープラス)
『ラリーのミッドライフ★クライシス』(HBO/U-NEXT)
●『Hacks(原題)』(HBO/U-NEXT)
『マーダーズ・イン・ビルディング』(Hulu/ディズニープラス)
『パーム・ロワイヤル』(Apple TV+)
『レザベーション・ドッグス』(FX/ディズニープラス)
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(FX/ディズニープラス)
今年1月の第75回エミー賞やゴールデングローブ賞、俳優組合賞などでも強かった『一流シェフのファミリーレストラン』 が獲ると予想。対抗できるとしたら『Hacks』くらい。
リミテッドシリーズ部門作品賞
★『私のトナカイちゃん』(Netflix)
『FARGO/ファーゴ』(FX/ディズニープラス)
『レッスン・イン・ケミストリー』(Apple TV+)
●『リプリー』(Netflix)
『トゥルー・ディテクティブ:ナイト・カントリー』(HBO/U-NEXT)
Netflixが得意とするリミテッドシリーズでは、『私のトナカイちゃん』VS『リプリー』のNetflix対決。おそらく『私のトナカイちゃん』。『トゥルー・ディテクティブ:ナイト・カントリー』も高評価だが、ジョディ・フォスターの女優賞で落ち着きそう。